うーん…(がりがりがり)
ふふ、悩み事があると爪を噛むクセは治ってないようですわね。
あら、懐かしい顔じゃない。戻って来てたのね。
当分はこちらに居るつもりですわ。 それより貴女が考え込むなんて珍しいですわね。
他愛のないことよ。 これまでゲームボーイのローンチタイトル4本のうち2本を紹介しているから、残り2本もいずれ取り上げようと思っているの。 それで『ベースボール』のことを考えていたのだけど。
いいじゃありませんの。 私も持ってましたわよ。
それが、特に取り立てるようなアピールポイントが少ないからどう紹介すればいいか考えていたというわけ。
あらまあ、そういうことでしたのね。
勘違いはしないでほしいけど、何も悪いゲームというわけではないわ。 かつてファミコンでも同名タイトルを出していたけど、そこから大幅に進歩しているしね。
でしたらファミコン版との違いを追求してみませんこと? 話していれば答えが見つかるかもしれませんわよ。
そうね…まずは守備かしら。 捕球の処理がオートからセミオートになって、自分でも操作できるようになったわ。
十字キーの操作が優先されるが、キーを離すと自動で追いかけてくれる。
ファミコンのオート守備は性能に難がありましたわね。 ピッチャーが外野までゴロを追いかけていたり、外野へのライナーがランニングホームランになりやすかったりしましたわ。 干渉できないのがもどかしかったですけど、そのあたりは概ね改善されていますわよ。
フライに関しては完全に任せてもいいくらい性能が向上したわね。 ゴロやライナーは自分で操作した方がいいことも多いから、感覚的に良さそうな方で処理するといいわ。
選手の個性も出ましたわよね。 各選手に名前が付いて、打率や器用さなどのパラメータが設定されたことでチームらしくなりましたわ。
選手ごとの得意分野が設定された。
ファミコン版は選手に名前がないばかりか打席の左右もランダムだったものね。 チーム名やユニフォームの色は当時のセリーグ六球団をモチーフにしてて、その気分を味わうことはできたけれど。
パラメータができたことで戦略性も生まれますわね。 打線には一発のある選手やバントが得意な選手、足のある選手が並んで本物の野球のような戦い方ができますわ。
あとは、試合終了時の演出が用意されたわね。 勝ったら監督を胴上げするシーンが流れるわよ。
大きく飛びあがる監督。
負けたら空き缶を投げられるんですのよね…。 まったくマナーがなっていませんわ。
ファンに責められる悲哀。
残念だけど、負けた試合の観客がグラウンドにゴミを投げる行為は時折あるのよね…。 まったく嫌なリアリティだわ。
チーム数は大きく減りましたわよね。 ファミコンでは6つありましたのに、ゲームボーイでは2つしかないですわ。
チーム名はホワイトベアーズとレッドイーグルスよ。 正確にはジャパンモードとUSAモード、それぞれで登録されている選手が違うから実質4チームあるようなものだけど。 モードが違うチーム同士では戦えないのよね。
ジャパンモードは変化球投手が多くて、USAモードはスタミナに長けた速球投手が多いですわ。 せっかく国ごとに明確な特長があるのですから、日米の対抗戦もプレイしてみたかったですわね。
容量の都合なんでしょうけど。使うチームごとに対戦相手が1つで固定されているのは物足りないわ。 日米で別のBGMを用意したりして雰囲気の違いを出しているのはいいんだけど、チーム名を使いまわしているところには手抜きを感じてしまうわね…。
こんなところかしら。 諸々ベースアップされているけど、どれも当時の野球ゲームには標準であるような機能ばかりだから、どうしても地味な印象は否めないわね。
ファミコンをはじめとして様々なハードで個性的な野球ゲームが多数発売された後ですものね。 それらと比較してしまうと埋もれてしまうのも仕方ありませんが、ゲームボーイで一番最初に出たということが何よりの個性だと思いますわよ。
確かにそれは間違いないわね。 ハンディなゲーム機で本格的な野球を手軽に楽しめるという体験は他ではできなかったもの。
ローンチとしては多くの人に受け入れられるためにオーソドックスにした方がいい側面もありますわ。
世の中に野球ゲームがたくさん出た後の作品だからこそ、最低限押さえるべきところをわかっていたとも言えるわね。 他の初期ラインナップを見ても定番ソフトに位置づけようとしていたのがわかるわ。
そうですわ、本作ならではの話題がひとつありましたわ!
あら、続けて。
本作にはマリオとルイージが出演しているんですわよ。
あら?そんなのいたかしら…。
いた。
いたわね。 そういえばUSAモードの両チームのエースがマリオとルイージだったわ。
もっとも名前だけでグラフィックは汎用キャラのものですけど、本作の北米版のメインイラストではピッチャーがマリオになっているんですのよ。
北米版のメインイラスト。投手はまさしくマリオ
へえ、そんなことになっているのね。 ゲームボーイの初期ソフトはマリオが端役で登場することが多いのは知っていたけれど。
北米版のメインイラストがマリオに置き換わっているゲームは他にもありますのよ。 せっかくですから幾つか並べてみますわ。
アメリカでは結構マリオを押し出していたのね。 日本ではマリオが主役のゲームじゃなければメインイラストに据えたりはしないんだけど。
安心のブランド力というやつですわ。 任天堂でありマリオであるということは一定以上のグレードであることの表明になるんですのよ。
同じゲームでもどこをどうアピールしたら売れるかは国や地域で変わってくるけれど、 北米版のメインイラストがこうなったのはマリオに対する信頼の証だったということなのね。
ですから、アメリカでは後にゲームキューブやWiiでシリーズ展開された『スーパーマリオスタジアム』の元祖がこのゲームボーイ版『Baseball』だと捉えている人もいるようですわ。
画像はゲームキューブ版『スーパーマリオスタジアム』。
内容が同じゲームなのに、販売戦略の違いが後々まで影響を与えているのね。 なかなか面白い話だったわ、ありがとう。
初稿:2021年12月10日
最終更新:----年--月--日