1978年にインベーダーブームが起こって、タイトーの『スペースインベーダー』とそのコピーゲームでアーケード市場が席巻されたことは知られているわね。
翌年になるとブームは沈静しますが、拡大した市場の後釜を狙うポスト・インベーダーと呼ばれるヒット作が幾つか出現するようになります。 ナムコの『ギャラクシアン』、ユニバーサルの『ギャラクシーウォーズ』、電気音響の『平安京エイリアン』などですね。
このラインナップにも一端が見えるが、スペースインベーダーのヒットに影響されて戦争系のゲームが多くリリースされるようになった側面がある。
それでゲームセンターのユーザー層の大半を男性が占めるようになったから、女性ユーザー層を狙った作品として企画されたのが1980年にナムコから発売された『パックマン』よ。
パックマンは新しい発想が多く盛り込まれていたわ。 詳しい説明は後に譲るけど、その狙いは成功して歴史的な大ヒット作になるの。
特にアメリカでは目覚ましい実績を上げ、最初の1年で10万台の普及を見せると1982にはTVアニメ化され最高視聴率56%を獲得するなど、1980年代のミッキーマウスと呼ばれるまでの人気となりました(^^)
パソコンや家庭用ハードにも数々移植されてきたが、今回はファミコン版を用いて紹介したいと思う。
1面開始前。
この黄色いボールに口が付いたようなものがパックマンだ。 このシンプルなデザインがこの後長きにわたり人気を維持し続けるんだからわからないものだな。
プレイヤーはパックマンを操作して、4体のモンスターの襲撃を掻い潜りマップ通路を埋め尽くすドット(エサ)を食べ尽くすのよ。
この設定は『女性は食べることが好きなのではないか』と考えたゲームデザイナーのアイディアが基になっています。
目的が食べることになって、それまでのゲームみたいに敵を倒すことが第一義じゃなくなったのよね。 攻撃性がないゲームは当時だとかなり珍しかったわ。
モンスターとの追いかけっこはあるけどね。 でも見た目が可愛いし、死んで消えたりするなんてこともないからコミカルで殺伐さはあまりないわ。
モンスターにはそれぞれ性格があり、違った動きをする。 ただの色違いだけではない個性があるんだ。
ちょっと!色違いとか言っておいて全員白いんだけど!見分けつかないわあ!Σ(゜Д゜;)
ああ、これは取説のイラストね。1色刷りだから色が付いてないのよ。持ってくるの間違えちゃったわ。
ぜったいわざとですよね(^^;)
改めて、ゲーム内の画像を持ってきたわ。
モンスターは普段パックマンを追跡するけど、時々休憩のために自分の縄張りに戻るの。 パックマンもそうだけど、こうした個性を持ったマスコット的なキャラクターはこれまでのゲームにいなかったわね。
親しみやすさを感じるフォルムですね(^^) この4つの個性はゲーム的にも意味があり、どのモンスターが近くにいるかに応じて臨機応変に立ち回りを変える面白さを生んでいます。
一際大きな『パワーエサ』。これを食べるとパックマンはパワーアップしモンスターはいじける。
パックマンは画面四隅にある大きなドット、パワーエサを食べると一定時間パワーアップするわ。 その間はモンスターに噛み付けるようになるのよ。
パワーアップ中、モンスターは真っ青なイジケ状態となってパックマンから逃げようとする。 このとき噛まれたモンスターは目だけの状態になって中央の巣に戻り、一定時間経つとまた復活するという流れだ。
パワーエサによって鬼ごっこのように攻守が入れ替わるんですね。
やっぱり逃げ回る弱い立場にいるだけじゃ息が詰まるものね。 パワーエサの発想はアメコミの『ポパイ』が基になっているわ。
アメリカのアニメから着想を得たということで、後にアメリカで日本を超えるヒットを飛ばすのは当然の帰結だったかもしれないな。
アートワークもアメコミっぽさがあるし、上手く嵌ったんでしょうね。
ゲームに慣れていない人を取り込むための工夫はまだあって、ひとつに複雑な操作を排しているわ。 パックマンを移動するためのレバー1本だけで遊ぶことができるのよ。ファミコンだと十字キーだけでいいわ。
難しいものと思われたら寄ってこないもんね。 シンプルな操作なのに奥が深くて、よくこんなに綺麗に纏められたなあと思うわ。
特定のステージをクリアした後に流れる『コーヒーブレイク』と呼ばれるデモアニメも新機軸だ。 当時の感覚だと操作できない時間があるというのは考えられなかったが、キャラクター性を押し出したゲームとして世界観を高めるために取り入れられている。
2面クリア後のコーヒーブレイク。鑑賞して心を休めよう。
コーヒーブレイクにはゲームプレイの緊張をほぐす狙いもありました。 それと先のステージのデモアニメが見たくて頑張る、というモチベーションアップにも一役買っています(^^)
画面が華やかな感じに彩られていることもポイントね。 カラフルな色使いのセンスが目を引くわ。女性を引き付けるにはプレイしている姿がどう見えるかも大事なのよ。
パックマンはゲーム初心者向けに製作されたこともあり、当時他にあったゲーム達と比べ難易度は意図的に抑えられていた。
しかし上級者に人気が出なかったということもなく、ハイスコアを競う争いで盛り上がりを見せていきました。
イジケモンスターや時々現れるフルーツターゲットを連続して取るとボーナス得点がもらえるわ。 これを利用して高得点を目指すのよ。
フルーツターゲットは全部で8種類。出現から10秒で消えてしまうから逃さないように。
実は本作のモンスターの行動やフルーツターゲットの出現はパターン化されていて、パックマンが以前と全く同じ行動をとればその時の状況が再現できるわ。 最適なパターンを探して、確実に再現する高度な遊び方をする人たちが現れたのね。
こうした上級者のゲーマーは1度のプレイで長時間筐体を占有するからインカムの低下に響くんだが、その懸念をはねのけてパックマンはロングランヒット作となっていくんだ。
パックマンはアメリカでスマッシュヒットしたことは繰り返し言ったけど、実のところ日本ではそこまで目立つ立ち上がりじゃなかったのよ。
もちろん人気はあったんですけど、トップに躍り出るというほどではなかったんです。 それまでの戦争系のゲームの流れがあったので異色なものとして見られちゃったんですね(^^;)
だけど何年も人気が落ちないロングラン製品になったのよ。 もうずーっと長いことゲームセンターや駄菓子屋に置かれていたわよね。
高い完成度ゆえだろうが、同じようなコンセプトで作られたゲームが他に少ないということもあるだろう。 ファミコンに移植されたのはアーケード版から約4年半後の1984年11月だが、現役のアーケードゲームがやってきたと思えたものだ。
ファミコン版は基本的に完全移植を目指していて、わりと移植度は高いわ。 ハード性能の制限で少し色数が減っていたりゲームスピードが僅かに変わっているから物足りなさを感じる人もいるかもしれないけど、概ね違和感ないように調整されているわよ。
パックマンはこの後も幾度となく移植が繰り返され、近年はアーケード版の完全移植を成したものも多いです。 これからプレイするのにあえてファミコン版を選ぶこともないかもしれませんが、風営法の影響や当時のゲームセンターの雰囲気に馴染めず通えなかった人も多くいます。 このファミコン版が原体験だという人も多くいるのではないでしょうか。
初稿:2021年2月7日
最終更新:----年--月--日