◆ストーリー◆
ところがある日、四男のカートンがガールフレンドのジェニーを連れてきたから、さあたいへん。
クインティは、大好きなお兄ちゃんをジェニーに取られてしまうと思い、また、3人の兄たちは弟のガールフレンドを好きになってしまう始末。
クインティたちはイタズラ心を起こして、ジェニーをどこかに連れていってしまいました。
そうして困りはてたカートンは……。
(取扱説明書より)
後に『ポケットモンスター』シリーズの開発元として世界に名を馳せるクリエイター集団、ゲームフリークの処女作がこの『クインティ』だ。
当時のゲームフリークは同人サークルという体裁で、まだ企業体ではありませんでした。 どこからも機材の提供を受けず独自に開発環境を構築し、3年にも及ぶ長い期間をかけ完成させたのです。
完成したゲームはナムコに持ち込まれ、少々の手直しを加えた上で無事に発売されることとなった。 ファミコンでは唯一の市場流通したインディーズ作品なんだ。
そしてクインティは約20万本を売り上げて当時で5千万円もの莫大な印税が入って…。 これを機にゲームフリークは正式に会社として立ち上がるのよ。 このあたりの経緯は色々と面白いエピソードがあるんだけど今回は割愛するわ。興味があったら調べてみてね。
◆ストーリー◆
困り果てたカートンは実力行使でジェニーを奪還することにします。 目指すはジェニーが捕らわれた天空の城。嫉妬に駆られた兄妹たちの目を覚まし、元の仲良し5兄妹に戻ることはできるのでしょうか。
登場人物の関係を図にするとこうなるわけだ。
一目で分かる人物関係。(キャラクターイラストは取扱説明書より)
ドロドロでぐっちゃぐちゃな四角関係の愛憎劇だわ。 兄妹間ってとこがエグイわあ!(´Д`;)
強烈な設定でつかみはバッチリですね!(^^)
むしろ引くわよ!(´Д`;)
ポップな雰囲気の見た目と設定のギャップには驚くが、ストーリーを語るゲームではないしそのあたりは深く考えなくてもいいぞ(´Д`;)
ですが妹クインティの設定は今見てもかなり先進的なもので、強いセンスを感じますね(^^)
妹でブラコンでヤンデレだもんね…(´Д`;)
こんなの時代を10年は先取りしてるわ。
その代わり3人の兄貴たちは割を食ってるな。 取説のイラストも完全に使いまわされているし。 やはりタイトルにもなっているクインティが陰の主役だ。
敵を全滅させるのだ。
本作はステージクリア式のアクションゲームです。 ステージ内に配置されている敵を全滅させるとクリアになるのですが、敵の倒し方がユニークなんです。
床のパネルを武器にして。
床に敷き詰められた7×5の35枚のパネル。 カートンはこれをめくって上に乗った敵を転ばせ、その勢いで壁にぶつけて倒すんだ。
敵に直接触るとすぐミスになってしまうのが少しシビアだけど、パネルをシャカシャカめくるのは楽しいわ。
ゲームフリーク主宰の田尻智さんは『新しいゲームは新しい動詞から生まれる』と考え、『めくる』という動詞を選び抜きました。 めくる動作には特にこだわったと見え、ただめくっているわけでも気持ちよく感じられますね。
パネルには種類があり、描かれたイラストに応じた特殊な効果を得られます。 全部で14種類あるパネルのうちいくつかを紹介しますね。
これらのパネルはあちこちに配置されているから、どのように活用していくかが攻略の鍵になるわ。 めくったパネルの下に他のパネルが配置されていることもあるし、たった1画面だけど奥の深いステージ構成になってるのよ。
出典:ファミリーコンピュータMagazine1989年No.10 6月2日号。
横から見るとこんな風だな。 パネルは最大で7層まで重なっていて、メタルパネルがない場所ではループする。 難しいステージでも隠されたパネルを使えば簡単にクリアできることもあるから、行き詰まりそうになったら探してみるといい。
後半になると敵のスピードが上がるので、スターパネルはこまめに集めておきましょうね。
私のお気に入りはサンパネルね。
一発で敵を全滅させるのが気持ちいいのよ〜(^^)
しかし、めくれたパネルの下にエネミーパネルがあって涙目になったりするんだぜ?
歓喜から絶望へ。
とってもありがちです!(^^;)
敵キャラクター達も個性豊かだ。 見た目もそうだが、動きのパターンがコミカルで親しみやすい。 兄妹たちを除くと9種類の敵キャラが登場するぞ。
多くのキャラがパネルめくりへの対処法を持っていますね。 倒し方にも一工夫が必要です。
一目見たら大体どんな特徴か予想がつくデザインばかりだし、説明がなくても遊んでればすぐに理解できちゃうのは凄いわね。
こちらのマネをして動くミミーのステージでは操作を止めると音楽も止まり、直感的なプレイ感覚を向上させてくれる。 ゲーム音楽の役割というものを改めて気付かされたもんだ。
ラウンドは選択制。
ゲームを始めたら、最初にラウンドを選ぶわ。 中央のお城以外は自由な順番で進められるのよ。
ラウンドごとに登場する敵キャラクターは決まっています。 建物の右下いるキャラがそうですね。 初心者の方は特徴のないウォークマンのラウンドから始めるのがいいでしょう。
各ラウンドは10ステージで構成されている。 10ステージ目では兄妹を含めたボスとの戦いが待っているぞ。
ラウンドは選択制。
最初に選べる8ラウンドを制覇したら中央のお城に行けるようになります。 しかし覚えているでしょうか。ジェニーが攫われたのがどこだったのか。
『天空の』お城だったわね…。
追い詰められたクインティの本気。
9ラウンド目をクリアするとカートンはクインティによって拉致される。 行き先は遥か雲の上。ここが天空の城、本当の目的地だ!
本作は全10ラウンド、計100ステージのゲームなのでした。 天空の城は最後だけあって難しいところです。 諦めないで少しずつ打開策を見つけていってくださいね。
100ステージを制覇しても本作の楽しみはまだ終わらない。 どの場面でもいいからスタートボタンとセレクトボタンを押しながらリセットすると現れるEXTRAステージが手ぐすねを引いて待っているぞ。
タイトルロゴの右上に『EXTRA』の文字。
いわゆる裏ステージってやつね。 こっちも全100面だけど、通常ステージとは違って攻略順は選べないわ。通しで攻略しないといけないのよ。
これが天空のお城なんて歯牙にもかけない難しさなんです(^^;) 敵のスピードも尋常じゃなくなってますし。 練習に練習を重ねて、運も味方につけて、長時間プレイを続けても折れない精神力が必要ですね。
そうなんだよな。言っていなかったが、本作にはセーブやパスワードのような進行状況を記録しておく術がない。 一度電源を切ったらまた最初からプレイし直さなければならん。
どうしても長丁場になるものだから、難所に行く頃にはもう疲れちゃってることも珍しくないのよね。 おかげで最初クリアするまでに何年もかかっちゃったわよ(^^;) 本作の唯一にして最大の問題点だわ。
この点は2014年にWiiUでバーチャルコンソール版が配信されたことによってようやく解決します。 WiiUでは『まるごとバックアップ』機能で進行状況を文字通り『まるごと』保存しておきことができます。
おかげで遠かったオールクリアがぐっと近づいた。 本作は長らく移植もリメイクもされておらず、最新機種で遊べるようになったのは実に25年ぶりのことだった。 この形を待ち望んでいたファンも多かったことだろう。
残念ながらWiiU版は2020年6月25日をもって配信が終了してしまいましたが、終了直前の6月18日に発売されたNintendo Switch用オムニバスソフト『ナムコットコレクション』に収録された1本としてプレイすることができます。
写真はパッケージ版。
こちらは『まるごとバックアップ』と同等の機能に加え、任意のタイミングでプレイ状況を少しだけ巻き戻す機能もついている。 ちょっとしたミスをやり直して回避するのに便利だぞ。むろん使いすぎては面白くないがな。
ダウンロード版はバラ売りもしてて、1タイトル300円(+税)で買えてお買い得よ。
余談になりますが、クインティは漫画化もされていました。 JICC出版局発行の『ファミコン必勝本』で1990年から1995年の長期にわたり全57話が連載されていたんです。
ファミコン必勝本の後継誌、『HIPPON SUPER!』でも連載は継続された。
この漫画はゲームフリークの一員であり本作のキャラクターデザインを担当した杉森建さんが自ら描いていたため、公式としての位置付けがより強調されていた。
ゲームでは見られない掛け合いが楽しい。
そうそう、私もこの漫画がきっかけでゲームの方に手を出してみたのよ。 これもいい宣伝にもなってたんじゃないかしら。
当時単行本化する予定もあったが実現できずファンは涙を飲んだ。 しかし2014年になり徳間書店より作品集『杉森建の仕事』が発売され、その中に全話フルカラー掲載される運びとなったんだ。
中央を飾るのはクインティ。
権利関係で問題があるという噂もあったので諦めていましたけど、2014年はWiiUでの配信開始と合わせてファンにとって嬉しい年になりました(^^)
クインティはシリーズ化こそされなかったが、多くの人の心に残りゲームフリークの代表作となった。
この漫画が惜しまれつつ終了した数ヵ月後、あのポケットモンスターが発売されることになるんだけど。 まるでその成功を予感していたかのような、絶妙なタイミングでの幕引きだったわね。
初稿:2020年8月10日
最終更新:----年--月--日