眠り薬と赤い水

任天堂は今でこそ世界に名だたるゲームメーカーだけど、その事業は花札の製造から始まっていたことはよく知られているわね。

花札だけじゃなく、実はトランプにも一日の長があるのよ。 1902年に日本で初めてトランプを製造したのが任天堂なわけ。

任天堂は時代に合わせて様々なトランプを販売していくわ。 まず特筆すべきは1953年、国内で初めてプラスチック製のトランプを開発したの。

紙よりも値段が張るから最初こそ売れにくかったようだけど、数年もすればその価値が認められてプラスチック製がスタンダードになったわ。

任天堂がやり手だったのは、トランプを買ってもらうための市場開拓が実に的確だったことよ。 トランプって、どんな人達が使って遊んでいたと思う？

そこで任天堂は子供たちの間にもトランプを普及させて売り上げを伸ばそうとしたわけ。

1959年のことだけど、当時日本の子供たちの間で流行りだしていたディズニーキャラクターをあしらったトランプを作ったのよ。 ミッキーマウスやらピーターパンやらね。今ではキャラクタートランプなんて珍しくもないけど、その起こりはこの時の任天堂なの。

このディズニートランプは大いに売れたけど、数年後にはすっかり子供たちに行き渡ってしまったみたいで売り上げは鈍化するわ。 そこでまた新しいトランプをどんどん開発していく流れになるわけ。

占いやマジックに使えるトランプもあったわ。 扇のようにきれいに広げやすいよう特殊加工したシャルマントランプ、 特殊な眼鏡を掛けるとカードが透けて見えるミラクルトランプあたりは遊び心が光るわね。

任天堂ではもう特殊なトランプは作っていないけど、マジック用のものは他社から色んなものが出ているから興味があれば探してみると面白いわよ。

1990年代に販売されていた『クリンスルートランプ』よ。 普通のトランプとの違いがわかるかしら？

他のトランプにはない特別感があるでしょう。

何十種類とあるわよ。アート作品のような無機質なものからキャラクターイラストを使ったものまで多様にあるわ。 任天堂らしく、マリオやカービィのイラストを使ったものも多いわね。

クリンスルートランプは21世紀になると作られなくなったけど、たった一度だけ景品として復活したことがあるわ。 2012年に任天堂の会員制サービス『クラブニンテンドー』のプラチナ会員特典として『プレミアムマリオトランプ』を貰うことができたの。