眠り薬と赤い水

星のカービィゲームボーイ|ゲームレビュー

パッケージ表

パッケージ裏

ROMカートリッジ

タイトル画面

カービィのデビュー作

肴倉もろみ

まあるいピンクの人気者、カービィがデビューしたのは1992年のことでした。 ゲームボーイ用ソフト『星のカービィ』。すべての始まりになったタイトルを今回は取り上げましょう。

ピータン

2020年時点でシリーズ30作品以上、累計の売り上げ本数は4,000万本以上を数える大人気シリーズの原点だ!

更科みどりこ

この初代作と出合った時のことはよく覚えてるわ。 パッケージに大きく描かれた可愛いピンクのキャラがディスプレイで目立ってて、つい手に取りたくなったのよ。 それで私でもクリアできそうと感じて買ってみることにしたのよね。

初心者でも楽しめるように

ピータン

みどりこの言った『自分でもクリアできそう』という印象は本作を語るうえで重要なファクターだ。 というのも、当時のアクションゲームはどんどん操作が複雑化し高難度化が進んでいたからだ。

肴倉もろみ

ゲームプレイの上手な人が増えてきて、そんな上級者が満足できる手応えを出すために難しくする。 ゲーム業界全体に強く見られた傾向ですが、その結果ゲームをはじめて触る人が楽しめるようなものが少なくなっていきました。 『カービィ』はこの事態を憂慮し、ディレクターである桜井政博さんの提案により初心者向けとして製作されています。

更科みどりこ

だから操作系統はシンプルにまとめられているわ。 特徴的なのがカービィ固有のアクション、吸い込みとホバリングよ。

ピータン

敵に近づいてBボタンを押すとカービィは敵を吸い込み頬張ることができる。 頬張った敵は十字キーの下を押すと飲み込むことができるが、吐き出して別の敵にぶつけることもできる。

吸い込んで…頬張る。

吐き出して…ぶつける。

肴倉もろみ

十字キーの上を押すと空気を含んでフワフワとホバリングすることができます。 このときBボタンを押すと敵を倒せる空気弾を撃つこともできますよ。

空気を吸い込んで宙に浮く。

空気弾を吐き出して…ぶつける。

更科みどりこ

カービィと言えばコピー能力だけど、それが初めて実装されるのは次回作『夢の泉の物語』だから本作の時点では存在しないわ。 吸い込みとホバリング、基本的にはこれだけ覚えれば問題なく遊べるわよ。

ストーリー

ピータン

と、今のうちにストーリーを紹介しておくとしよう。

◆ストーリー◆

それは、地球からずっとずっと遠く離れた小さな星の、そのまた小さな国のお話です。

その国のひとたちはあきれかえるほどの平和の生活を楽しんでいました。
その国の名前は「プププランド」といいます。

しかし、長く続いたプププランドの平和も、おしまいの時がやってきました。
ある日の晩、丘のむこうの「デデデ山」から、くいしんぼうで有名な「デデデ大王」とその手下たちがやってきて、一晩でプププランドの食べ物という食べ物をドロボウしてしまったのです。
そしてそれどころか、その国に伝わる空飛ぶ秘宝「きらきらぼし」までも奪いさってしまったのです。

宝物を奪われたひとびとは悲しみましたが、それよりも、おなががすくのはもっと困ります。
みんなどうしようかなとなやんでいる時、ひとりの若者がプププランドにやってきました。

その若者は旅の途中でした。
しかし、プププランドのひとびとが困っていることを聞くと、みんなの食べ物をぼくが取り戻し、みんなおなかいっぱいごはんを食べられるようにしてあげようと、ひとりでデデデ山へむかっていきました。

はるかぜとともに現れたゆうかんな若者。その名は「カービィ」。
プププランドのみんなのおなかを満たすため、それいけカービィ、がんばれカービィ!!

(取扱説明書より)
更科みどりこ

そういえばカービィって若者で旅人だったんだっけ。 いやあ…ストーリーは覚えてたつもりだったけど、所々忘れているものね(^^;)

肴倉もろみ

デデデ大王との縁はここから始まったんですね。 後に善良な面も強調されてカービィと共闘するようにもなっていきますが、本作では完全な悪役として描かれています。

ピータン

なお、ここで使われた『はるかぜとともに』というフレーズは後にスーパーファミコンの『スーパーデラックス』に収録されたリメイク版の副題として使われることとなる。 カービィらしさを表す秀逸なコピーだよな。

ステージ1:GREEN GREENS

緑の植物が溢れる土地。

ピータン

ステージ1は『GREEN GREENS』。 自然豊かでのどかな風景が広がっている。 敵の攻撃もまだ大したことはないし、ここでひととおり操作に慣れておこう。

更科みどりこ

まだデデデ山までは遠いし、カービィの存在も知られてないだろうしね。 平和でやさしいワンダーランドって雰囲気だわ(^^)

飛ばないと超えられない壁。

肴倉もろみ

こちらはステージ序盤に配置されている壁です。 ジャンプで超えられない高さの壁を用意しておいて、ここでホバリング操作を覚えてもらおうというわけですね。 本作の設計思想を象徴する場面です(^^)

ピータン

このステージはホバリングを使えば大半の敵やギミックを素通りできるんだ。 地上を普通に進むもよし、飛んでスキップするもよし。自分の腕前や気分に合わせて望むように遊んでくれ。

中ボス、『ポピーブロスシニア』。爆弾で攻撃してくる。

更科みどりこ

ステージ途中には中ボスがいて、倒さないと先に進めないわ。 1面はこのポピーブロスシニアが相手ね。爆弾を投げてくる危険な敵だけど、逆にその爆弾を吸い込んでぶつけ返しちゃいましょう。

ピータン

こいつに限らず、ボスキャラは吸い込むことができず空気弾も通用しない。 対抗手段は必ず相手が持っているから焦らずチャンスを待とう。 初期ライフが6もあるから多少やられても平気だぞ。

巨大なボスの『ウィスピーウッズ』。

肴倉もろみ

ステージボスは樹木に顔が付いたウィスピーウッズです。 口からの空気弾をホバリングで避けて、頭上から落下させてくる木の実を吸い込んで反撃しましょう。

秘宝を取り戻し、喜びのカービィダンス。

更科みどりこ

倒すと奪われていたきらきらぼしを取り戻せるわ。 ファンファーレに合わせて踊るカービィがまた可愛いのよね(^^)

ステージ2:CASTLE LOLOLO

オバケが漂う奇妙なお城。

肴倉もろみ

ステージ2の『CASTLE LOLOLO』です。 オバケがいたりコウモリがいたり、少し怖ろしげな雰囲気です(^^;)

ちょっぴりホラーチック。

ピータン

このステージは吸い込めない敵も多いんだ。 出会ったら一緒に登場する吸い込める敵を使って倒すか、無視して進むことになるだろう。

ウニのような形をした『ゴルドー』。

更科みどりこ

特にこのゴルドーは触れるとライフが3も持っていかれるから要注意よ(´Д`;) 何か攻撃してくるわけじゃないから避けてさえいればいいのが救いね。

この城の主『ロロロ』。

肴倉もろみ

中ボスはこちらのロロロです。 4つある出入口のどこかからブロックを押しながら現れ、そのブロックを蹴り込んできます。 ブロックを吸い込んで反撃しましょう。

ピータン

対処は簡単だが、引き返すのが速いから現れたら急いで近くまで行かないと反撃が間に合わないことがある。 正確な操作が鍵だな。

相棒の『ラララ』を引き連れて再登場。

更科みどりこ

ステージボスはさっきも登場したロロロと、この城のもう一人の主『ラララ』よ。 2人とも、今度は8つある出入り口のどれかから現れて反対側にブロックを運んでいるわ。

ピータン

今回は途中で引き返すということをしないから、ブロックを吸ってもそのままでは体当たりされてしまう。 吸い込んだ後は別の列に退避し、躱した後で背後からぶつけてやるといい。

ステージ3:FLOAT ISLANDS

ヤシの木が立ち並ぶリゾート島。

更科みどりこ

ステージ3は『FLOAT ISLANDS』よ。 キラキラきれいな海の南国風の島だけど、そろそろ中盤ステージだし敵の攻撃も厳しくなるわ。 油断は禁物よ。

頭上にはヤシの実、地上には敵キャラが。

肴倉もろみ

木から落ちてきて当たると痛いヤシの実や砲台などの仕掛けが多く、あまり立ち止まっている余裕がありません(^^;) 無理に反撃せず間を縫っていくことも必要ですね。

じっとりと暗く狭い洞窟。

ピータン

途中にある洞窟は狭く、敵や鍾乳石を避けて進むのが少し難しくなっている。 これまでより繊細なホバリングを心がけていこう。

肴倉もろみ

クジラの力を借りて上空の雲の上までやってきたカービィの眼前にあったものは…サツマイモです!

意味深に置かれたサツマイモ。

更科みどりこ

カービィはサツマイモと食べると空気弾を連射できるようになるの。 このステージに中ボスはいないわ。ここで戦うのがステージボス、飛行船『カブーラー』よ!

怒濤の空中砲台『カブーラー』。

ピータン

この戦いのみシューティングゲーム形式となっている。 カブーラーの砲台から放たれる砲弾と体当たりを躱して空気弾を当ててやろう。 空気弾はAボタンの押しっぱなしで連射されるから避ける方に集中するといい。

ステージ4:BUBBLY CLOUDS

ふわり広がる雲の世界。

肴倉もろみ

ステージ4は『BUBBLY CLOUDS』。 カブーラーとの戦いから引き続き雲の上、そして宇宙空間が舞台になります。 聳え立つ神殿のような建物が神秘的ですね。

荘厳な雰囲気のある建物。

ピータン

ここにくるとカービィが吸い込める範囲の外から遠隔攻撃してくる敵が増える。 うまくタイミングを計らねば連続ダメージを受けてしまうだろう。安易に近づくのは危険だな。

更科みどりこ

足場のない場所も増えてきて、落下ミスを誘っているわ。 敵を頬張ってる状態じゃホバリングできない仕様がここにきて牙をむくわよ(^^;)

大きな単眼『クラッコJr.』。

肴倉もろみ

中ボスは単眼の周りに4つの球体を纏った『クラッコJr.』です。 高速での体当たりに連続砲弾、敵キャラのワドルドゥを放るなど多彩な攻撃でカービィを苦しめます(^^;)

大きな単眼『クラッコ』。

ピータン

ボスは先程のクラッコJr.が変身したクラッコだ。 棘の生えた雲のような姿をしている。砲弾の代わりにビーム攻撃を放ってくるようになるが、動きが遅い分クラッコJr.より戦いやすいかもしれない。

肴倉もろみ

ほぼすべてのシリーズ作に登場する代表的なボスです(^^)

ステージD:Mt.DEDEDE

ついに来たデデデ大王の居城。

ピータン

いよいよ最終ステージ、デデデ大王の住む魔の山だ。 ここでは過去に倒したボスたちが再び戦おうと待ち受けている。

これまでのステージで戦ったボスたちが前哨戦の相手だ。

更科みどりこ

4連戦を突破するとデデデ大王のいるリングに到着するわ。 今度こそ本当に最期の戦いよ!

諸悪の根源デデデ大王。

肴倉もろみ

デデデ大王はハンマーや大ジャンプ、スライディング等の多彩な技で襲い掛かってきます。 またカービィと同じように吸い込み攻撃を行うこともでき、吐き出しからの叩きつけは驚異です。

ピータン

最期の敵らしく体力も高い。 持久戦になるだろうが、行動パターンを理解すれば安定して立ち回ることができるだろう。 ここまできたらあとはもう少しだ!

エクストラゲーム

ピータン

エンディングは割愛するが、クリアして改めて思うのはやはりステージ設計の巧みさだ。 自然な導入で操作を理解させ、少しずつ難しくしておきながら決しては理不尽さを感じさせることはない。

肴倉もろみ

普通にプレイしていると気付きにくいことですが、意識して観察してみると多くの発見があります。 とにかく初心者への配慮が行き届いているんですよ。

更科みどりこ

あえて難点を挙げるなら慣れた人なら30分もあればクリアできちゃうってことだけど、実はそれは早合点なのよ。 初心者向けを謳っておきながら、上級者に向けた挑戦状も用意してあるわ。

クリア後に明かされる隠しコマンド。

肴倉もろみ

タイトル画面で十字キーの上、セレクトボタン、Aボタンを同時に押すと中央に『EXTRA GAME』の表示が現れます。 こちらは難易度を押し上げたゲームモードになっていて、慣れた人でも舌を巻く難しさになっています(^^;)

ピータン

敵の配置や攻撃力に行動パターン、移動速度などが大きく調整されている。 ノーマルモードを一度クリアしたくらいではとうてい太刀打ちできない、まさに上級者用のモードだ。 もし本作に触れて初めてゲームというものを遊んだのなら心が折れてしまいかねないが、気長に挑戦してみてほしい。

コンフィグモード

エクストラクリア後に明かされる隠しコマンド。

肴倉もろみ

もしエクストラゲームもクリアすることができたなら、ご褒美にもうひとつの隠しコマンドが明かされます。 それはなんとコンフィグモード。タイトル画面で十字キーの下、セレクトボタン、Bボタンを同時に押すと切り替わります。

最大体力や初期の残機数を変更することができる。

ピータン

コンフィグモードではカービィの最大体力と初期の残機数を変更することができる。 やろうと思えば1ミスでゲームオーバーになるように設定することもできてしまうぞ。 好きに変更して遊ぶといい。

更科みどりこ

でもやっぱりコンフィグモードの目玉はサウンドテストでしょ。 なんたってゲーム内で使われてる音楽を全部自由に聴くことができるんだもの!

肴倉もろみ

カービィシリーズの楽曲は高く評価されていますからね(^^) 耳当たりの良いメロディアスな旋律がいつまでも耳に残りますよ。

ピータン

自力でこの隠しコマンドを知るのは尋常なことじゃないが、これらのコマンドは当時雑誌上でも公開されていた。 そちらで知って試した人も多くいるだろう。

更科みどりこ

先にコンフィグで残機を増やしてからエクストラに挑戦する人も多くって、逆転現象が起きてたわね。 私もやったけどさ(^^;)

まとめ

肴倉もろみ

当初、本作はカービィの可愛らしい見た目から子供向けという見方をされていましたが、その評価が覆るまでに時間はかかりませんでした。本作は売れに売れ、なんと全世界での出荷数500万本を超える大ヒット作となります。

ピータン

あくまでも子供向けじゃなくて初心者向けなんだよな。 他にないアクションを採用しておきながら快適にプレイできるのは工夫が行き届いているからだ。 ゲームへの入門編という当初の狙いを果たし、ゲーム人口を拡大した功績は偉大だ。

更科みどりこ

その魅力にいち早く気が付いたのが子供たちだったのかもしれないけど、誰でも楽しめるように配慮し尽くしたからこれだけ多くの人に届いたんでしょうね。まだまだ新作にも期待したいわ。

カービィの色

肴倉もろみ

さて、ここから先は余談のコーナーです。 カービィにまつわる逸話をいくつか取り上げてみたいと思います(^^)

ピータン

まずはカービィの体色についてだ。

更科みどりこ

カービィと言ったら色鮮やかなピンクよね。 あんなに目立つ色はないわよ!(^^;)

肴倉もろみ

ではここで本作の海外版である『Kirby dream land』のイラストを見てみましょう。

海外名は『KIRBY'S DREAM LAND』。

更科みどりこ

ん…あれ、白いわ!Σ(゜Д゜;)

ピータン

これには理由があってだな…。

更科みどりこ

古いから色褪せちゃったとか?(´Д`;)

ピータン

そんな訳あるか!(´Д`;) これはゲームボーイの画面が白黒だから海外スタッフが勘違いしたためらしい。 カラー作品である次回作のファミコン版以降はちゃんとピンクで描かれるようになっているぞ。

肴倉もろみ

まだインターネットなども普及しておらず、海外との情報のやりとりに苦労していた時代ならではの話です。

ティンクル☆ポポ

『星のカービィ 20周年メモリアルファンブック』より引用。

ピータン

もうひとつ、これは有名な話だが、本作は元々『ティンクル☆ポポ』というタイトルになる予定だった。

更科みどりこ

その頃はカービィも『ポポポ』って名前だったのよね。

肴倉もろみ

カタカナ3文字が続く名前はプププランドやデデデ大王、それにロロロやラララなど名残が見られますね。

ピータン

『ティンクル☆ポポ』は開発元のHAL研究所から1992年1月発売予定として広告が打たれ2万6千本の受注も取っていたが、 本作に目を付けた任天堂の宮本茂さんの『もったいない』『ちょっといじるだけで、ものすごくおもしろくなる』という発言を受け発売を中止して再開発されることとなったんだ。

更科みどりこ

マリオやゼルダの生みの親ね。他社のゲームに対してなかなか凄いこと言うわ(^^;) でもこの開発中止があって500万本に繋がるんだから正しい読みだったわね。

ピータン

この話にはもう少し補足がある。 当時HAL研究所は経営機器に喘いでいた。 ゲームソフトの売り上げが次第に減少していたことに加え、バブル景気に便乗して始めた不動産投資の失敗により約50億円の負債を抱え倒産寸前だった。

肴倉もろみ

このような状況に陥った会社は得てして自転車操業に陥ります。 少しでも利益を増やすために開発期間を縮め、その結果が完成度に響き、評判に悪影響が出て売り上げが下がる…ということになりがちです。 その渦中でもほとんど質が落ちなかったのがHAL研究所の凄いところですが、内部は疲弊していました。

ピータン

そこで任天堂が再建を支援することとなり、カービィは負のサイクルの柵から外れた。 時間をかけて再調整することになり、発売元も任天堂に変更することで売り方も改善された。

更科みどりこ

ということは、もしHAL研究所が経営危機じゃなかったら…。

肴倉もろみ

もしかするとカービィは生まれなかったかもしれません。 複雑な事情の中に奇跡的な巡り合わせがあったんです。

ピータン

カービィシリーズをはじめとしたゲームソフトの成功で1999年には負債を完済し、HAL研究所はみごと再建に成功する。 カービィはプププランドだけでなくHAL研究所の救世主でもあったんだ。

初稿:2020年4月11日

最終更新:----年--月--日

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