ちょっと面白いものを入荷したから見て行かない?
凛々しい見返り桃太郎。
これは桃太郎…、それもロゴを見るに『桃太郎伝説U』のテレホンカードですね。 激しい風雪を受けて仁王立ちする桃太郎の構図が迫力あって格好いいです(^^)
『桃太郎伝説U』と言えば1990年12月22日にハドソンがリリースしたPCエンジン向けのRPGだな。 前作のファミコン版は様々な御伽話を混ぜたコミカルな世界観で人気を博したが、本作ではPCエンジンの機能を活かして各要素が大幅にパワーアップし、同ハードを代表するRPGのひとつに数えられるようになった。
桃太郎伝説Uのボックスアート。
桃太郎伝説の世界観を固めてその後のスピンオフ作品の礎となった、シリーズの中でも重要な位置付けの作品でもあるわね。 それで、このテレホンカードはどのあたりが珍しいのかしら?見た感じは特に変わったところはないけれど。
ヒントは桃太郎の背中にあるわ。
桃太郎の背中―? あ、よく見ると大きく『7』の字が書かれているわね。
背中に掲げた『7』の文字。
『7』だと!?…と言うことは、もしかしてこれは『桃太郎セブン』なのではないか?
え、何言ってるの? このゲームはセブンじゃなくてツーよ?
すまん、言い方が紛らわしくなってしまった。 少々込み入った話になるのだが、桃太郎伝説Uは当初『桃太郎セブン』という少年が主人公のSF作品として開発が進められていたという経緯があるんだ。
そう言えば聞いたことがあります。 なんでも、前作主人公の桃太郎に代わって一人の勇気ある少年が主人公して活躍するお話だったとか…。
ご明察。これは桃太郎セブンが描かれたテレホンカードなのよ。
詳しく言うとこのセブンVer.は前作の冒険から3年後のお話になっていて、今度は宇宙からやってきた鬼が近代兵器を武装して地球に攻めて来たという幕開けよ。 だけど応戦した桃太郎は敗北して行方不明になり、代わりに鬼退治を志した一人の少年も同じように力尽きてしまうの。
しかしその少年の勇気が『桃星雲』に住む桃太郎の家族達に認められ、新世代の桃太郎『桃太郎セブン』として再び立ち上がるという筋書きとなっていたようだ。
そんな裏話があったのね。桃太郎がSF作品として作られていたなんて驚きだわ。 でも2代目の桃太郎なのに、なんで『セブン』っていう名前になったの?
その点は特撮作品の『ウルトラマン』を踏襲しているからだな。 そちらの後継タイトルは『ウルトラセブン』だっただろう?
桃太郎シリーズはパロディ要素も多いので、そうした設定の流用もギャグの一環として行われていたようですね。 他には仮面ライダーのパロディとして『お面ライダー』が登場する予定もあったそうですよ。
な、なるほどね。いちおう理解したわ。 そうなるとこのテレホンカードは本当の開発初期に作られたものなのね。
それにしても、実際に発売されたゲームの内容は桃太郎セブンが出てくるものとは全く違うわよね? どうしてここまで大きな方向転換をすることになったのかしら。
しばらくは桃太郎セブンが主役であるバージョンの開発を進めていたんだ。 ゲーム雑誌でもその内容が紹介されていたので読んだ覚えがある人もいるだろう。
『月間PCエンジン』1990年2月号より抜粋。
こちらの特報記事が掲載された雑誌は1989年12月26日の発売ですから、ちょうど発売1年前の頃ですね。
あら、この記事の中にテレホンカードのイラストの元絵らしいものも載っているわ。 もしかするとメインイラストのような位置付けだったのかもしれないわね。
桃太郎セブンのイメージスケッチ。
しかし制作快調に見えた桃太郎セブンVer.だったが、ある程度開発が進んだ時点でとある大きな問題に直面してしまう。 どうやら桃太郎の代名詞である『愛と勇気』がSFの世界観と上手く馴染まずにシナリオの製作が難航したようなんだ。
そこで行き詰った開発陣はそれまで作ったストーリーやグラフィックを全部捨てて一から作り直すという選択をするわ。 前作と地続きである和風の御伽噺の世界観を取り戻した桃太郎伝説は驚くほどスムーズに開発が進んだそうよ。
新たなシナリオが完成したのは1990年のゴールデンウィーク期間中だったと言うから、どれだけ急ピッチで立て直されたのかわかるだろう。
そんな状況から年末までの短期間であれだけの大作を作り上げたなんて…凄いわね。
初代の桃太郎伝説がヒットした要因は子供でも理解できて楽しめるパロディ要素、それと芯の通った『愛と勇気』でした。 しかし桃太郎セブンVer.ではそのバランスが上手くいかなかったようですね。 一度完結した物語の続編を製作することの難しさを感じます。
確かに桃太郎セブンVer.も面白そうなストーリーではあるけど、その面白さは和風とSFのミスマッチさに由来するものね。 桃太郎伝説の本質を継承するなら製品版の方が真っ当だわ。
その真髄に辿り着くまで少々迷走はしたものの、最終的にはしっかりとした面白い続編を作り上げてくれたのだから開発陣には惜しみなく賛辞を贈りたいな。
桃太郎セブンVer.に費やした時間が無駄だったということではなくて、開発陣が桃太郎伝説の本質を掴むのに必要な過程だったと思うわ。 ゲームはスクラップ&ビルドの繰り返しで作り上げられていくものだもの。 公式グッズでは唯一このテレホンカードが桃太郎セブンが存在したことを示す証よ。
初稿:2025年03月16日