『ピーナッツ』連載70周年を記念して刊行された『完全版ピーナッツ全集』は全25巻。
『スヌーピー』はアメリカの漫画家チャールズ・M・シュルツ氏が1950年から2000年にかけて発表したコミック『ピーナッツ』に登場するビーグル犬だ。 ユーモア溢れるキャラクターが人気となり全世界で広く愛されているよ。
そんなスヌーピーを初めとするピーナッツの面々が日本に上陸したのは1968年のことです。 徐々に人気が拡大していき、1970年代には誰もが知るほどの有名キャラクターになったそうですわ。
日本でスヌーピーが定着したのは1970年代なんですね。 今でも所々で見かけますし、流行り廃りの早いキャラクタービジネス界においてずっと第一線でいられるのはすごいです。
当時の人気を証明するデータのひとつですが、1975年に行われた第1回サンリオキャラクター人気コンテストでもスヌーピーは1位を獲得していますわね。
<第1回〜第2回サンリオキャラクター人気コンテストの記録>
今なお続く歴史のあるコンテストの初回で1位を取ったというのは大成果ですね。 …あれ?ええと、スヌーピーはサンリオキャラじゃなかったと思うんですけど、私の勘違いでしょうか?
いや、その認識は正しいよ。このリストの中で言えばスヌーピーとオラーシオはサンリオが著作権を持つキャラクターではないね。
誤解なきようにお伝えすると、このコンテストは1997年ほどまではサンリオがライセンス契約している外部版権のキャラクターもノミネートの対象だったんですの。 その後は自社版権であることがレギュレーションとなりましたわ。
スヌーピーはレギュレーションが変わってノミネートができなくなるまでの間、ずっと10位圏内にランクインし続けていた実績があるんだ。
なるほど、当時はレギュレーションが違ったんですね。しかし他のサンリオキャラクターに交じって上位をキープし続けているところはさすがの貫禄です。
サンリオは白くて耳の垂れた犬のキャラクターは人気が出るというデータを持っていたんだけれど、当時のサンリオにはまだキャラクターを開発するノウハウが不足していた。 そこでサンリオの社長がスヌーピーに目を付けて使用権を獲得したという話だよ。
その目論み通りスヌーピーは大人気となり、データの正確性が裏付けられました。 データによれば次に人気があるのは白い猫だったそうで、『次こそは自社開発を』との願いが実って生まれたのがハローキティだったそうですわ。
ハローキティはそんな経緯で生まれたんですか! するとスヌーピーの存在はサンリオの歴史に深い影響を与えているんですね。
影響を与えたのはサンリオに限った話ではなく、今日のキャラクタービジネスの広がりに多大な貢献をしたのは間違いないね。 今回はそんなスヌーピーを起用した日本では初のコンシューマゲームソフト、『スヌーピーのマジックショー』を取り上げるとしよう。
スヌーピーと4匹のウッドストック。
本作は固定画面のアクションゲームですわ。 操作するのはもちろんスヌーピー、画面内に点在するウッドストックとその仲間を探し集めるのが目的ですわね。
ウッドストック達は各ステージに4匹ずついます。 四隅に1匹ずつ配置されていることが多いですが、ステージによっては変わった位置にいることもありますね。
ステージ内はボールが絶えず跳ね回っており、触れるとミスになってしまう。 ボールの動きを観察してぶつからないように予測しながら移動しないといけないよ。
殺意に満ちたボールがスヌーピーを襲う。
画面内をボールが跳ね回る様子はブロック崩しを髣髴とさせますね。
その着眼点は面白いね。 ブロック崩しは自機でボールを受けて跳ね返すゲームだけど、発想を逆転させて避けるゲーム性に転換させたのが本作と言えるかもしれない。
ブロック崩しから着想を得た可能性は無きにしも非ずですわね。 しかし、単にボールを避けるだけのゲームにはなっていないところも本作の特徴です。 次はステージの仕掛けを構成する様々な種類のブロックについて見てみましょう。
ブロックはその形状によって異なる機能を持っているんだ。 押して動かせるものや触って壊せるもの、上に乗るとワープするものなど様々あるよ。
ブロックの中にはアイテムが入っていることもありますわ。 アイテムはボールの動きを止めるものと無敵状態になれるものの2種類があり、いずれも効果時間は短いですが便利なのでなるべく獲得していきたいですわね(^^)
ステージごとに特色があって、どういう経路でウッドストック達を集めるか考えるところはパズルゲームっぽさもありますね。 反射神経だけで攻略するのは難しそうです。
本作のステージ数は60面とたっぷり用意されています。 それに加えて本作の難易度は高めで遊び応えがあり物足りなさを感じることはないでしょう。
60面クリアーの画面。戦いは新たなステージへ。
さらに60面クリア後には続けて裏ステージにチャレンジできる。 この裏ステージは表と全く同じ構成なのだけど、新たにスヌーピーの兄であるスパイクが登場し邪魔をするようになるんだ。 スパイクは常にスヌーピーを追いかけ回してきて、接触すると即ミスになってしまうとんでもない強敵だよ。
久々に再会した兄が弟スヌーピーに牙をむく。
もともと難しめのゲームなのにさらに難しくなったんですね(^^;) でも1プレイが短いしミスしてもすぐにやり直しできるので不思議と熱中しちゃいます。
リトライ性の高さも本作の特徴ですわね。 失敗の反省をすぐに活かせて自分の成長を実感できますし、そこが楽しくて続けてしまうんだと思いますわ。
ところで、本作をプレイしてひとつ疑問に思うことはないだろうか。 それはタイトルの『マジックショー』とは何なのか、ということだ。 この答えは取扱説明書でもゲーム本編でも一切言及がないからね。
それは私も気になっていました。 ボールを避けてウッドストックを集めるゲームがなぜ『マジックショー』と銘打たれたのか…。 同名のTVアニメがあるらしいと知ったんですが、内容はどうやら別物っぽいんですよね。
そのアニメは日本では1982年にTV放映されたものですわね。 スヌーピーが皆の前でマジックショーを披露し、やがてチャーリーブラウンに透明人間にしてしまうという異色のエピソードですわ。 ゲームとは別物ですが楽しい作品なので、鑑賞をお薦めしますわよ。
どうしてこのようなタイトルとなったのか、ちょっと推測してみようじゃないか。 ゲーム内では説明がなくても周辺情報を調べてみればヒントが見つかることがあるからね。
わあ、興味深い話が聞けそうですね(^^)
実は本作、元々はスヌーピーのゲームとして製作されていたわけではないということはご存じでしょうか。
え!そうだったんですか?Σ(゜□゜)
初めてゲーム雑誌に掲載された際は『デスボール』というタイトルだったね。 反射して跳ねるボールを避けながらハートを集めるゲームとして紹介されていたよ。
ファミコン通信1989年第24号より引用。
画面写真を見る限りは『スヌーピーのマジックショー』とほぼ同じですね。 ということは後からキャラクターのグラフィックを差し替えたんでしょうか。
これは推測に過ぎませんが、初めはオリジナルキャラクターを使った企画として進められていたものを開発途中でスヌーピー達に載せ替えたのではないかと考えています。
元々は別のキャラクターだったのに、気が付いたらスヌーピーたちに変化していたんだ。 これこそスヌーピーによる大掛かりな入れ替わりマジックだったとは考えられないだろうか?
なるほど、入れ替わりマジック…って、そのオチはちょっと強引すぎやしないですかー?(^^;)
それは冗談ですけれど、実は北米版にその答えがありますわ。 本作は海外でもリリースされていて、ゲーム内容は同一なのですが日本版と比べマジックショーの要素がやや補強されているんですの。
例えばボックスアートのスヌーピーはシルクハットとマントを纏っていてマジシャンの風格があるね。
ゲーム内容をよく表した北米版のアート。
飛び回るボールの中でウッドストックを救出しているシチュエーションが描かれていますね。 本作がどんなゲームなのかを1枚の中に表現しきった素晴らしいイラストだと思います(^^)
そして北米版のパッケージの裏面には日本版では語られなかったストーリーが掲載されています。 少々長いですが一読してみてくださいませ。
ええと、ざっくり要約すると『スヌーピーが危険なマジックボールのトリックに失敗して制御不能になったので、助手のウッドストックを暴走したマジックボールの襲撃から助け出そう』、ということなんですね。
ウッドストックが4匹いる理由もマジックの暴走によるものだとして説明されているね。 ゲーム内容が『デスボール』の流用だということを踏まえればうまく辻褄を合わせられていると思うよ。
そもそもマジックボールとはどういうものなのがというところに少々疑問は残りますが、それなりに納得できる理由付けだと思います。
置かれている状況が理解できているかどうかでゲームへの没入感が変わってきますから、日本版でもこのような説明があると良かったですわね。
日本人に高い人気のあるスヌーピーを大々的に押し出したゲームソフトということで、 ゲームファンのみならずスヌーピーファンにも注目された一作だ。
海外版のボックスアートも素晴らしいですが、国内版の黄色いパッケージもお洒落で目立ちますね。 店頭で思わず手に取りたくなる存在感を放っています。
スヌーピーという有名なキャラクターを起用しながらもそのキャラクター性に頼りきりになっていないところは好印象ですわ。 何度でもどこまでも遊んでしまう底の深さがありますわね。
本当にそうですね。サクサク遊べる手軽さとリトライ性、それにボリュームを兼ね備えた楽しいゲームです(^^)
本作にとってスヌーピーのライセンスが取れたのは幸運だったね。 流用元のゲームとの相性も悪くないし、キャラクター目当てで買った人達も十分満足できたのではないかな。
初稿:2021年03月15日
改訂1:2021年03月26日
改訂2:2025年08月17日