参考:ニンテンドーDS『リカちゃんDS もっと!おんなのこレッスン』(2009年)
日本におけるファッションドールの代表格といえば、言わずと知れたタカラ(現:タカラトミー)の『リカちゃん』が挙げられます。初代リカちゃんが発売されたのは1967年7月4日のことでした。
リカちゃんはファッションドールの代名詞にされるくらいのスタンダードよね。
タカラは新しい目玉商品として当時流行していた海外製のファッションドールを持ち歩くためのドールハウスを企画したの。だけど人形のサイズが大きすぎて持ち歩くには適さないサイズになってしまったわ。
そこで考えたのが、日本の女の子にちょうど良いサイズのドールを作ることです。 日本人に親しみやすい可愛らしさを表現するため、少女漫画のデザインを取り入れすことにしました。
透き通るような白い肌、星が輝く大きな瞳、6頭身でスマートな体型、儚げでミステリアスな表情、まさに少女漫画のヒロインよね。
その目論見は大成功し、おしゃれが大好きな女の子たちは瞬く間にリカちゃんに夢中になりました。 50周年を迎えた2017年時点で6,000万体以上を売り上げるロングセラーとなっています。
さて、本家のリカちゃんの話はいったん置いておいて、今回のテーマはスピンオフ作品の方よ。 1997年のリカちゃん生誕30周年を記念してアニメ化の企画が立ち上がるの。
タイトルは『スーパードール★リカちゃん』です。 設定やストーリーを大幅にリニューアルし、小学3年生の女の子『香山リカ』ちゃんが周囲の人物と織りなす日常、そして彼女の身柄を狙う悪党との戦いを描くTVアニメが展開されました。
アニメ版より香山リカちゃん。
そうそう、リカちゃんでバトルものをやり始めたものだから初めて見た時はビックリしたわ(^^;)
家族構成も見直されているわ。 デザイナーの母『織江(オリエ)』、オルゴール作家の父『ピエール』、母方の祖母『七重(ナナエ)』にリカを加えた4人家族よ。 物語の開始当初、ピエールは海外出張のために長期不在にしているわ。
両親についてはデザインこそ一新されていますが、名前や職業は本家のものを流用しているので従来のファンも関係性は理解しやすいと思います。
おばあちゃんだけ本家とは名前が違っているのよね。 その辺りの事情に詳しい人なら『おばあちゃんには何かありそう』…って勘づいたかもしれないわ。
おばあちゃんはこの物語のキーパーソンですからね。 そのあたりの話はあとでもう少し詳しくやりましょう(^^)
TVアニメは好評につき当初の予定から延長されて全52話が制作され、劇場版も公開されたわ。 メディアミックス展開にも乗り出して少女漫画誌『なかよし』での漫画連載やゲーム化も行われたのよ。
コミカライズは征海未亜さんが手掛けた。
ずいぶん前置きが長くなっちゃったけど、今回取り上げるのはこのゲームボーイカラー用ソフト『スーパードール☆リカちゃん きせかえ大作戦』よ。
リカは博物館に向かうが、お弁当を忘れて取りに帰る。
ストーリーは社会科見学で博物館に行くところから始まります。 現在はファントッシ展というものを開催しているようですね。
ファントッシ文明発掘の責任者、スケアクロウ博士。
スケアクロウ博士の助手による引率のもとで男女に分かれて行動することになるのだけど、リカは級友のダイに唆されて2人だけで別行動することにするの。いけない子達ねえ。
集団行動からこっそりと抜け出す2人。
忍び込んだ2階の人形の間で出会った大学生の『累(ルイ)』さんからファントッシは一説には人形の国ともいわれている幻の文明で、その国にはドールナイツっていう人形の騎士が王を守っているという伝説があるということを教えてもらえるわ。
大学でファントッシ文明を専攻しているという累。
累さんと別れたリカちゃんとダイくんは他の皆を探しに行くことにします。 そこにスケアクロウ博士の助手が現れ、それぞれの組の居場所に合流することになりました。
リカは中庭に行くんだけど、そこで待っていたのはスケアクロウ博士だったわ。 だけど様子が変なの。怖い顔で静かに話し出したと思ったら、リカのことを『王女様』と呼んで無理矢理連れ去ろうとするわ!
博士の語る内容の意味はまだわからない。
リカが悲鳴を上げると眩い光の中から1人の女性が現れるわ。 赤い髪に赤い服を纏った彼女は自らを『ドールリカ』と名乗り、スケアクロウと対峙するの。
光の中からドールリカ見参。
さあ、お待ちかねのバトルシーンですよ! 初戦は謎のお姉さんドールリカとスケアクロウとの対決です!(^^)
バトルシーンは1対1で。
では本作の戦闘システムについて説明しましょう。 攻撃ターンと守備ターンを交互に繰り返し、どちらかのHPがなくなると戦闘終了になります。
攻撃ターンと守備ターン、どちらも取れるコマンドは3種類よ。 攻撃ターンではパワー、スピード、必殺。 守備ターンでは防御、回避、カウンター。 それぞれの効果は下にまとめておくわ。
各コマンドには相性があり、例えばパワーに対して回避、スピードに対して防御コマンドを合わせるとダメージを軽減できます。
必殺はとっても強力だから使いたくなるんだけど、カウンターを合わせられると大ダメージが跳ね返ってくる諸刃の剣なのよ! 使うときはドキドキするわ!(゜□゜;)
ジャンケンに似てるようでちょっと違う駆け引きが味わえるわ。 どうしても運の要素が強いシステムだから好みはありそうね。
スケアクロウは撃退できましたが、ドールリカも姿を消してしまいました。 リカちゃんを連れ去ろうとしたスケアクロウ。その素性は謎のままです。
この後もスケアクロウとその一派は学園や街中、果ては自宅にまで現れてリカの身柄を狙ってくるわ。 本当にしつこいやつらなのよ!(^^;)
どこにでも現れる追手。
リカをドールランドというところに連れていきたいみたいだけど、それがなんなのかもリカにはわからないまま。 いつも助けてくれるドールリカも戦いが終わるとすぐに去ってしまうから詳しい話は聞けていないし、リカにとっては不安な日々が続くわ。
そんなある日、おばあちゃんの七重さんが倒れてしまいます。 実はドールリカは七重さんがリカちゃんに与えたコールリングを介して呼び出した守護神だったのですが、呼び出す度に七重さんは自分の体力を大きく消耗していたのでした。
疲労が溜まって倒れてしまうおばあちゃんの七重。
やがて明かされた真実はこうよ。 ドールランドは不思議な人形の力で国を治めていた異世界の王国。 リカの母織江はドールランドの次期女王だったけど、人間と恋に落ちてしまうという国の禁を犯して皇位を剥奪されてしまったそうなの。
七重は妹の『八重(ヤエ)』と一緒に国を治めていたけれど、織江とピエールが子を儲けたことで対立してしまうわ。 八重の反発が激化して国を追われた七重と織江は人間界へ移り住むことになったのよ。 リカが生まれたのはその後ね。
八重は孫のリカにドールランドの王位を継がせるためにスケアクロウたちを使って奪還を狙っていたわけね。 だけどこれにも裏があって、八重にはドールランドの悪魔であるデヴォールが憑りついていたの。 デヴォールはドールランドを我が物にするために正当な王位継承者が持つ力を欲していたんだわ。
祖母と母から明かされるリカの出生。
リカちゃんは自身の素性を知り、周囲の皆が自分を守るために行動してくれていたことを理解します。 自らのために誰かが苦しむことを嫌ったリカちゃんはドールリカをナナエさんから引き継ぎ、デヴォールとの戦いに立ち向かう決意を固めるのです。
ストーリーを通して精神的に成長するリカの姿を見ていると目頭が熱くなるわ。 絶対にデヴォールの魔の手から皆を守り抜きましょう!
ファッションドールが基となった作品ですから、ゲームの中でもその要素は欠かせません。 あちこちにあるショップから服を購入でき、リカちゃんに着せることができるんです(^^)
服の部位は3つあるわ。 シャツやブラウスなどの上の服、スカートやズボンなどの下の服、それとワンピースやドレスなどの上下セットの服よ。 上の服と下の服は自由に組み合わせられるわ。
種類も豊富にあるからこの着せ替えだけでも十分楽しめるわね。 何を着せても似合っちゃうのはさすがだわ〜(^^)
豊富なコレクションの数々。
リカちゃんに着せるために全部の服を集めたくなるんですよね〜(^^)
だけど、色違いを集めるのは少し大変なのよ。 と言うのは店で買う衣服を選んでもどの色なのかはランダムなの。 つまり買った後じゃないと何色が手に入ったのかわからないってわけ。
ああそうそう、このシステムだけはちょっといただけなかったわ。 同じ服を10回買っても目当ての色が出ないこともあるし、なんでこんな風にしちゃったのかしら(´Д`;)
現実では許されない困った商法ですが、これはおそらく流行りの通信機能を使わせたかったんだと思います。 本作は別のソフトと服を交換することができるんですよ。
余った服は交換に出そう。
ソフト1本だけで全部の衣服を集めることはできるけど、手に入れる条件が難しい服がいくつかあるからお友達と協力して集めるといいかもね。
本作にはお金の概念はなく、衣服を買うためにはミニゲームの成果に応じてもらえるポイントが必要となります。
ミニゲームはストーリーの進行に応じて種類が解放され、リカの部屋で遊ぶことができるわ。
ストーリーに関係する内容のものが多いから、ここでは2つだけ紹介するわね。
リズムよくボタンを押して服を着替える”どきどきファッションショー”。
影の動きを真似する”シャドウとダンスバトル”。
ミニゲームは全部で7種類あります。 記憶力や反射神経、連打、正確なコマンド入力など、ゲームによって求められるテクニックが異なるので自分の得意なものを見つけてたくさんポイントを稼ぎましょう(^^)
でね、この着せ替えも攻略には必須と言える代物なの。 実はドールリカは集めた衣服の数に応じてパワーアップするのよ。
服を買う前と何着か買った後。ドールリカのHPが倍に増えていることがわかる。
本作の敵は全体的に強めに設定されていて、しっかり強化しないと簡単に負けてしまいます。 衣服を買わずに進めるのは不可能に等しいでしょう(^^;)
ワードローブの充実がそのままストーリーの進めやすさに繋がっているところは面白いと思うわ。 ストーリー重視のスピンオフ作品ではあるけど、『リカちゃん』の原点であるファッションの楽しさを味わえるようにしているのね。
ストーリーも面白いからつい早く先を見たくなるんだけど、そこは慌てずに新しい服を買って着せ替えを堪能するのが正解ね(^^)
本作のストーリーはTVアニメ版のメインイベントを繋いで再構成したものになっています。 原作の面白いところを凝縮しているので一作のゲームのシナリオとしては完成度が高く、最初から最後まで切れ目なく楽しめます。
アニメは放送された地域が少なかったから観たことがない子たちも多いだろうし、きっちり全体のストーリーが理解できるようにしてくれたのは嬉しいわ。
全52話もの長いストーリーを短くまとめているけど不自然さは感じないし、キャラクターが活き活きとしていて気持ちよくこの世界に入り込んでいけるわよ。
あまり広くはないけど、周りの人は優しくて居心地がいい街だわ。 だからこそ皆のために頑張るリカの気持ちも伝わってくるのよね。
それとストーリー、ミニゲーム、着せ替えを密接に絡ませたところは巧いわね。 先が見たければミニゲームで稼いで服を買わなきゃいけないけど、新しい服はストーリーを進めないと登場しないわ。 全要素をバランスよくプレイさせる作りになっているのよ。
先が気になるストーリーと着せ替え要素をミックスさせた楽しさ満載のゲームです。 ぜひリカちゃんの成長と決断を見届けてあげてください。
初稿:2023年3月23日
改訂1:2024年05月08日