新しいゲーム作るには新しいアイディアが必要だ。 しかしそんなものが簡単にポンポンと生まれるのなら苦労はしない。
何か思いついたからって、それがゲームとして面白いかどうかは別問題だしね。 ゲームデザインって本当に大変な仕事だと思うわあ。
アイディアを出すための方法論はいくつかあります。 わかりやすいところでは足し算方式というものがありますね。 既存の複数の要素をプラスしてみるというものです。
複数のジャンルを組み合わせて作られたゲームがあるが、これはこの足し算方式による発想だ。 過去に取り上げたゲームでも何作かあったよな。
アクション+RPGとか、クイズ+すごろくとか色々あったわね。
この手法は上手くやらないとそれぞれの要素を別々に遊ばせるだけになってしまう。 それはそれでいけないわけではないのだが、新しい面白さは生まれにくい。
面白いゲームのどこが面白く感じたのか、核となるポイントを抽出して上手にシナジーさせることができれば、さらに面白さが増すはずです。しかしそれを実践するのは難しいですね。
その点、今回紹介する『クォース』は実に巧みだったと言えよう。
クォースは1989年のアーケード版を皮切りに多くの機種で展開された作品ですが、今回はme2oさんのリクエストによりゲームボーイ版を取り上げることにしたいと思います。
先に答えを言ってしまうと、本作はシューティングとパズルの融合だ。 具体的にはシューティングゲームの操作方法でプレイするパズルゲームとなっている。
シューティング?パズル?どちらに見える?
手前の方に自機がいて、画面の上の方からブロックが迫ってきてるわね。 確かにシューティングっぽい構図だけどどうやって遊ぶのかしら?
それを説明するには本作のバックストーリーを知ってもらう必要がありますね(^^)
199X年、遠い宇宙で突如として発生した重力崩壊。 天体は自身の重力により急激に収縮し、やがて反発による膨張から大爆発が起きました…。
なんか急に壮大な話が始まったわあ!Σ(゜Д゜;)
それに伴い新星となるはずだった物質は空間に歪みにより巨大ブロック群と化し、周辺のありとあらゆる物体を砕いては呑み込んでいきます。 このブロック群はやがて地球に接近し『クォース』と名付けられました。
分析により、クォースは形を整えると分解する特性を持つことが判明する。 地球にとってこれが一筋の希望となり、急ぎブロックを形成する技術の研究が行われた。 そして完成した対クォース用ロケットが今打ちあがる…というのがプロローグの大筋だ。
ええと、つまり…どういうこと?(´Д`;) ストーリーはなんとなくわかったけど、それがゲーム内容にどうつながってくるのかしら。
まあ大半はフレーバー的な要素だからあまり細かいことは気にしなくても構わない。 ここで大事なのは、『クォースは形を整えれば消える』という一点だ。
自機からブロックを射出して、歪な形のクォースが綺麗な四角形になるように隙間を埋めていくんですよ。
窪みを埋めて四角形に整えよう。
あー、そういうことね! シューティングとパズルの融合っていう意味がやっとわかったわ。
本作の基本仕様についてもう少し説明しておこう。 まず自機だが、画面下側に仕切られたプレイヤーエリアから出ることができない。 つまり左右にしか移動できないんだ。
自機は上には行けず、左右移動しかできない。
黎明期のシューティングによくあるシステムね。 こういうタイプは撃つことに集中しやすいからわりと好きよ(^^)
クォースは意思を持たないブロック群なので、意識的にこちらに攻撃を仕掛けてくることはありません。 しかしクォースの進撃がプレイヤーエリアに達するとゲームオーバーになってしまいます。
コミカルチックに潰れる自機。
えええ、何かダメージを受けたわけでもないのに終わっちゃうんだ?(^^;)
まあ、クォースひとつでも消し損ねたら地球が破壊されかねないからな…。 そう考えると無理もないことだろう。
自機はブロックを4ピースまで連続で射出することができます。 そして気付いたでしょうか?出現するクォースは全て、4つのピースを打ち込むと四角形を形成できる形状をしているんです。
ああ、気づかなかったけど言われてみればそうね。 てことはうまく狙えば1回の連射で1つのクォースをリズムよく消せるけど、打ち損ねるとその分手間取っちゃうことになるわ。
精密な射撃はシューティングの基本ですからね。 コツとしては、横に移動しながら1マスずつ撃てるように練習するといいでしょう。
でもそれってクォースの形のパターンが限られてるってことでもあるし、ただ1マスずつ埋めていくだけならパズルと言うには単調すぎるんじゃないかしら。
いやいや、まだここからが本作の本領だ。 実のところクォースは外側の輪郭が4角形を形成していればよく、その四角の内側に隙間があっても構わない。 消し方次第では少ない射撃数で複数のクォースを消すことも可能なわけだ。
眼前に迫る大量のクォースにどう立ち向かう。
例えば、上のような配置だとクォースを1つずつ消すのは大変なのですが、打ち込む順番を工夫してみるとどうでしょう。
ちまちまと消していくのは大変だけど。
隙間があっても輪郭ができていれば一網打尽。
あー!まとめて消すことができるのね! なるほど面白いわ。どう消すのかを考えるところがパズル性ね。
それに序盤はともかくとして、効率よく消していかないとだんだんクォースの物量に押されてゲームオーバーになりやすくなるんですよ。できるだけ少ないショットで大きく消す方がいいんです。
そうだな。オリジナル版とは違いこのゲームボーイ版では残機制は採用されていない。 1ミスでゲームオーバーになってしまうから、生き残ることを最優先に考えたほうがいい。
へえ、オリジナル版では残機制だったのね。 じゃあゲームボーイ版は難しくなてるってことかしら。
それがそうとも言えず、1ミスでゲームオーバーという高難度化とのバランスを取るために便利なアイテム各種が用意されました。
一度に消したブロックの数に応じて5種類のアイテムが入手できるぞ。同じ種類のアイテムは1つずつストックしておけるからピンチに備えてキープしておくとよいだろう。
ふむふむ、クォースの落下が止まったり画面上のクォースを全部消せたりするのは緊急回避のために持っておきたいわね。
このゲームボーイ版はオリジナル版や他機種への移植版と比較してもアイテムの種類、残機制の廃止、ステージ制の導入など独自要素が多いのが特徴だ。
しかし核となる要素は揺るぎなく成立し、しっかりクォースらしい楽しさを保っています。 移植という言葉はしっくりきませんね。クォースの新解釈と言っていいのではないでしょうか。
他機種でプレイしていてもこのゲームボーイ版ではまた違った楽しさを味わえるってことね。 私はこれが初めてだから、改めてオリジナルがどんなのだったか確かめてみたくなったわ(^^)
初稿:2024年05月12日