1929年にアメリカの漫画家『エルジー・クリスラー・シーガー』氏によって生み出され、 やがて世界的な人気キャラクターとなった『ポパイ』が漫画の世界を飛び出して今度はゲームボーイに登場です。
ポパイは当初『シンブル・シアター』という漫画に一度限りの脇役として登場したのだが、 その強烈なキャラクター性が人気を博して間もなくレギュラーとなった。それどころか初登場から1年後には主役の座を奪い去るほどの過熱ぶりを見せたんだ。
主役の変更を受けて漫画のタイトルもやがて『ポパイ』に改題されることになるわ。 シーガーが1938年に亡くなった後も作品が複数の漫画家に引き継がれて、2025年現在もなお連載が続いているほどアメリカに根付いたキャラクターよ。
それだけの人気キャラクターなんだからゲーム化されるのは当然と言えるわね。 アーケードやファミコンでは任天堂がゲームを出していたけれど、ゲームボーイではシグマ商事がライセンスを取得しているわ。
だからしてタイトル名はアーケードやファミコンと同じく『ポパイ』だが、ゲーム内容については何ら関連がない。 混同しないようにしよう。
『ポパイ』の原作は水兵のポパイと恋人のオリーブ、それとポパイの同僚で恋敵の大男ブルートの3人を巡る三角関係が主軸となって織りなすコメディ漫画よ。 ゲームボーイの本作もこの定石に準じたストーリーが用意されているわ。
ポパイとオリーブは長い交際を経て、いよいよ結婚式を執り行うことになりました。 しかし横恋慕したブルートがオリーブを捕えようと襲いかかります。

逃げるオリーブと追うブルート。
果たしてポパイとオリーブはこの艱難辛苦を乗り越え無事に挙式することができるのだろうか? 本作はこのような筋立ての導入となっている。
ブルートの気持ちもわからないではないけれど、幸せいっぱいの結婚式を邪魔するなんて暴挙を許すわけにはいかないわ。 しっかりお灸を据えてあげなきゃね。

オリーブを探せ。
ではゲームスタートです。 迷路状のマップを探索して、ブルートの魔の手から逃げ回っているオリーブを探し出して保護してあげましょう。 きっと心細い思いをしているに違いありませんから。
オリーブは移動速度が速く常に動き回っているため、出会うには些か苦労するかもしれない。 せっかく見つけても壁越しですぐには会えないこともよくあるからな。
かと思えば向こうから近寄ってきてくれてすぐに出会えることもあるけどね。 近寄ってタッチすればポパイと同行してくれるようになるわ。

愛しのオリーブとの再会。
だけど捜さなければいけないのはオリーブだけじゃないわ。 実は甥っ子の赤ん坊『スイーピー』も行方不明になっているの。
赤ちゃんがこんなところに一人でいるのは危険ですから、早く見つけてあげたいですね。 ですがスイーピーはオリーブと違い、初めからマップ上に出現しているわけではないんです。
スイーピーの出現条件はオリーブを連れていること、およびマップ上の全てのハートマークを回収していることだ。 条件を満たすとマップ上の何処かに現れるぞ。

ハートマークを取って…。

スイーピーを助けよう。
オリーブの救出とハートマークの回収はどちらが先でも構わないわ。 制限時間内にスイーピーを保護すればそのステージはクリアよ。
しかし事は簡単には運ばない。 ポパイの行く先にはブルートが立ち塞がり、ワニやハゲタカなどの手下をけしかけてくるんだ。
ポパイがこの獰猛な手下達に接触すると少しの間気絶してしまうの。 一度や二度なら問題ないけれど、何度もやられすぎるとタイムロスが響いてゲームオーバーになってしまうわよ。

手下のカンガルーを放つブルート。
怖いのは手下達だけじゃないわ。 そいつらを率いるブルートの強さも流石のものよ。 直接ブルートに触れた場合はBボタンの連打による殴り合いが始まって、負けた方は少しの間気絶してしまうの。

圧倒的なブルートのパワー。
体格のいいブルートはパワーがあり、勝つのはなかなか難しいんですよですね。 そこで登場するのがポパイの代名詞にもなったあのアイテムというわけです(^^)

逆転の秘策はホウレン草。
そう、ポパイといえばホウレン草によるパワーアップだな。 ポパイは危機的状況に陥るといつもホウレン草の缶詰を食べて乗り切ってきた。 もちろん本作でもその要素は健在だ。
ホウレン草の缶詰は時折画面外から現れます。 取ると一定時間の間歩く速度が上り、ブルートの手下は触れるだけで一撃で倒せるようになるんです(^^)
ブルート本人を一撃で倒すことはできないけれど、それでも格段に倒しやすくなるわ。 この逆転要素によるカタルシスがポパイの面白さね。
だけど、この力関係がちょっとわかりにくいからその点は注意ね。 いったん整理するけど、普段のポパイはブルートの手下には一撃でやられちゃうけど、当のブルートには頑張れば勝てるくらいの強さでしょ。
うむ、そうだな。
で、ホウレン草でパワーアップしたポパイはブルートの手下を一蹴できるけど、ブルートは一撃で倒せるわけじゃないと。 つまり、こうなのよね?
ええ、そうなりますね。
並べてみるとわかるけど、ブルートと手下の力関係まで逆転しちゃってるのよ!(^^;)
こういう仕様にした理由は説明しづらいわね。 ここは簡単に負けたくないブルートの意地がそうさせたと考えておきましょうか。 言わば積年の恋のライバルと最後の決着をつける戦いなんですもの。
しかし、ホウレン草で劇的にパワーアップしたとしてもブルートとはなるべく戦わない方がいい。 なぜならポパイとブルートが戦いの構えを取った刹那、オリーブは脱兎のごとく逃げ出してしまうからだ。

自分を助けに来た婚約者を置いて逃げ出すオリーブ。
は、は、薄情ーー!Σ(゜Д゜;)
いえいえ、きっとポパイが盾になってオリーブを逃がしているんですよ(^^;) 2人の殴り合いに巻き込まれでもしたら危険ですからね。
ただでさえブルートとの戦いには時間が掛かるのに、逃げたオリーブを再度助けに行くことも考えるとロスが大きいのよね。 本作はタイムの余裕があまりないから基本的には戦いを避けるのが正解になってしまうのよ。
このライバル同士の戦いがポパイの大きな見せ場なのに、戦わない方がクリアしやすいバランスになっているのはちょっと惜しいわね(^^;)

ウインピーはハンバーガーが大好き。
なお、ポパイの行動を阻むのは何もブルートだけではない。 もう一人、気ままな中年男性のウインピーが邪魔をする。
ウインピーはいつも片手に食べかけのハンバーガーを持ち歩いているほどのハンバーガー好きなのよ。 ウインピーはおもむろにハンバーガーを路上に置くわ。
全く正しいんだけど全く理解が及ばない説明の仕方はやめてくれない?(´Д`;)
繰り返しになるが、ウインピーはハンバーガーを路上に置く。 ハンバーガーは障害物であり、置かれた場所は通過できなくなるんだ。

ハンバーガーを道端に置く衝動。
ハンバーガーはパワーアップ状態のポパイがタッチするか、ウインピーが再びやってきて食べきるまで消えることがありません。 なのでハンバーガーの先にオリーブたちが閉じ込められたりしたら困ることになるんです(^^;)
そもそも食べ物を道端に置くんじゃないわよ! ポパイもそれくらい避けて歩きなさいな(´Д`;)
ステージが進むほどにハンバーガーが邪魔になる局面は増えていくわ。 除去するには運が絡むから、時にはブルートよりも厄介な存在になり得るわね。
本作は対戦モードも搭載しています。 基本的に1人用とルールは同じですが、プレイヤーはポパイとブルートに分かれての対決となります。
1人用では使うことができないブルートを使えるというのは新鮮なポイントだな。 ブルートを優先的に使いたがる人は多かったように思う。
主人公を差し置いて取り合いに? まあでもブルートを使えるゲームなんて珍しいし仕方ないかもね。
ブルートはわかりやすく強いですからね。 手下たちを呼び放題ですし、ポパイが通常時なら直接対決でもほぼ負けません。 足が少し遅く、自力でハンバーガーを消せないという弱点はありますが、それを差し引いても有利に立ち回れます。

ワニを無数に放出するブルート。
だからポパイはブルートになるべく関わらないことがセオリーになってくるわ。 足の速さを活かして逃げつつホウレン草を取って、手下の群れに切り込んで突破する戦法が有効ね。
5ステージ先取でオリーブと結婚できるエンディングが見られるぞ。

選ばれた未来の行方は。
あ、ブルートとも結婚できるのね。 でもオリーブ泣いちゃってるじゃない(^^;)
時には浮気をすることもありましたが、やはりポパイのことを強く想っていたんですね(^^) このエンディングを見るとそれがよくわかります。
この姿を見ちゃうと、ブルートがどれだけ強くて使いやすくてもポパイに勝たせたくなっちゃうわね。
ポパイとオリーブが結婚する描写はこれまでに何度か試みられているわ。 アメリカのTVアニメ『POPEYE AND SON』では未来の物語が描かれていて、夫婦になった2人と息子のポパイ・ジュニアが登場していたりもするわね。
原作漫画では長らく結婚していなかったが、ポパイ生誕70周年の1999年に描かれた『Wedding of Popeye and Olive』という読み切り作品の結末でついに2人は結ばれている。
この作品はポパイ登場以前に『シンブル・シアター』の主役でありオリーブの元恋人であった『ハム・グレイビー』やごく初期のストーリーに登場していた幸運の鳥『ウィッフルヘン』が再登場しており、 シンブル・シアターのひとつの結末とも言える仕上がりとなっています。
このゲームも含めて馴れ初めは全部違うパラレルな物語なんだけど、長い歴史が積み重なったキャラクターだから結婚という結末には深い感慨を覚えてしまうわね。
初稿:2020年12月26日
改訂1:2025年12月06日