単行本第1巻。
月刊少年ガンガンの1992年8月号より連載を開始した『魔法陣グルグル』は瞬く間に大人気作品となった。 全16巻が刊行されたコミックスは累計1400万部を突破し、3度のTVアニメ化や映画化も果たしている。
剣と魔法の世界で勇者が魔王討伐に向かう王道のストーリーラインを敷きながら その実コンピュータRPGのパロディをはじめとしたギャグ要素も多く、個性的なキャラクターが織りなすファンタジーとメルヘンとギャグが融合した不思議な作風が魅力的です。
ゲームのお約束をふんだんに取り入れた作風ゆえにゲーム化との相性が良いみたいで、コンシューマだけで4作がリリースされているわ。
今回はこの中から初代ゲームボーイ版、『勇者とククリの大冒険』を紹介します(^^)
これ、私は未プレイなのよね(^^;)
って言うのも、一週間前に出たスーパーファミコン版の方をやってたからさ。
これだけ発売日が近ければ両方買うのは難しいよな。 特にスーファミの方は定価が1万円を超えてるから尚更だったろう。 同じようにどちらを買うかで悩んだファンは多いんじゃないだろうか。
都から遥か西に位置する小さな村、ジミナ村。 この村には奇妙な幻獣の伝説がありました。
村人たちはそれを『グルグル』と呼び、決して起こしてはならない神として恐れ丁重に祀っていたが、いつしか信じる者は少なくなっていた。
この田舎町に住む13歳の少年『ニケ』が両親からムリヤリ勇者に仕立て上げられて旅立つことになるわ。
何が何でも息子を勇者にしたい両親。
村から出る前には魔法オババに会うというしきたりです。 ということでオババの家に向かいましょう。
顔の怖さで村人からも恐れられる魔法オババ。
オババは勇者がやってくるのを待っていたんだ。 まずは力試しをさせてくれと言うぞ。
正解すると相手のHPが減って、先に残量が0になると負け。
その方法とは、20枚のイラストから指定された条件を満たすものを相手よりも早く選ぶゲーム『はやおしピンポーン!』です!
え、唐突にミニゲームが始まるの?(^^:)
うむ、本作の特徴なのだが、一般的なRPGのような戦闘シーンは存在しない。 その代わりにストーリー上の障害を解決する場面ではこのようなミニゲームが挟まるんだ。
原作からしてあまり激しい戦いにならないことも多いですし、軽い気持ちで楽しめるミニゲーム制は良い落としどころではないでしょうか。
なるほどね。てっきりRPGだと思ってたからビックリしちゃったけど、言われてみればこの方が原作っぽいかもしれないわ。 他にはどんなミニゲームがあるのかしら?
そちらについては追々説明しますね。今のところはもう少しだけストーリーを進めてみましょう。
三つ編みの少女ククリ。
魔法オババはニケの実力を認め、グルグルの正体を明かし魔法使いの少女『ククリ』を託す。 グルグルとはミグミグ族だけが使える古代の魔術で、ククリはミグミグ族の生き残りだったんだ。
こうしてお調子者の勇者ニケと世間知らずの魔法使いククリの凸凹パーティが誕生したわ。 ここまでが原作の第1話目にあたる内容ね。
ここから2人がどんな冒険に出るのかワクワクしますね(^^)
コーダイ王国の拠点、コーダイ城。
次は勇者を募集しているというコーダイ城に向かおう。 城には勇者志願者がひしめき合っており、ニケたちが最後の登録者であるようだ。
硬い話が苦手なククリ。
そこに国王が登場して演説を行いますがククリちゃんは退屈なようで、途中で居眠りを始めてしまいました(^^;)
成り行きでゲイルと戦うことに。
見かねた勇者志願者のゲイルがニケ達を追い出そうとするけど、ククリが反抗してどちらが勇者にふさわしいか戦って決めることになったわ。 この流れだと次はやっぱり?
イラストを使ったしりとりゲーム。
そう、ミニゲームの時間だ。 ここで行われる『しりとりキング』は9枚のパネルをめくり、出てきた図柄でしりとりをするゲームだ。 うまく言葉がつながれば連続でめくることができ、最終的にめくった枚数が多い方が勝利となる。
雌雄が決した。
勝利すると国王に勇者として正式に認められ、旅立ちの資金と西にある『キタの町』に向かう役目を授かります。
ええと、原作ではこのあと城下町の買い物のシーンだったわよね。 ゲームの中にもそのイベントはあるのかしら?
ああ、あるぞ。 原作通り短剣とリコの花を買うイベントがある。 ククリが変な人形を買ってしまってお金が無くなり、結局売り払うところまでしっかり再現されてるぞ。
ニケからククリへの初めてのプレゼント。
気になったんだけど、このゲームってほとんど原作通りに進行しているじゃない? ここまででまだ2話目が終わったくらいでしょ、この調子で進むならよほど長いゲームになりそうなんだけど…。
それなのですが、本作のストーリーはキタの町のそばにあるノコギリ山のボスを倒すところまでなんです。
原作の話数にして12話分、単行本では約1巻分の量だな。
えっ!ノコギリ山って事実上次の目的地でしょ。 たった1巻分なんて、長いどころかとんでもなく短かったわあ!Σ(゜Д゜;)
だがこれは仕方ないところもある。 本作は最初のアニメ化に際して製作されたのだが、アニメが放送開始した1994年10月の時点では単行本の3巻が出たばかりでエピソードがあまり貯まっていなかったんだ。
3巻っていうと、ノコギリ山の次に行くシュギ村での冒険がちょうど終わるあたりね。
アニメやゲームの製作はもっと早く開始されたでしょうから、その時点で区切りが良かったのはノコギリ山での戦いだったということでしょうね。
そんなにアニメになるのが早かったのね。 スーパーファミコン版は完全にオリジナルストーリーだったけど、その理由が分かった気がするわ。
収録するエピソードを絞ったことには良い面もある。 一般的にストーリーを長くしようとするとどうしても容量の問題が生じる。他のゲームでも物語を一部カットして無理な展開になるなんてことはしばしば見受けられたが、本作の雰囲気は原作にかなり忠実だ。
カットするどころか町の住民の台詞も細かく原作から拾っているみたいだし、それは感じるわね。
寄り道要素も多いんですよ。町の中を歩き回って色んな人と話してみると原作にはないちょっとしたイベントが発生することがあります。 どれも違和感のないものですし、キレのある面白い会話が多いので探索するのが楽しいんです(^^)
本来まだ登場しておらず後のエピソードで初登場するキャラクターがファンサービス的に登場していたりもするぞ。
雰囲気を損なわない形での追加要素があるのは嬉しいわ。 ただ原作のイベントを再現してるだけじゃないのね。
また、ゲーム開始時に主人公を2人のいずれかにするか選ぶことができるんです。 選んだキャラクターの視点でストーリーが進むので、どちらか一方でクリアしてもまたもう一度楽しめますよ。
先ほどまでのストーリーはニケを選んだ際のものを紹介していたわけだ。
キャラクター選択画面。
へえ、それならククリ視点は是非やってみたいわね。 序盤はわりとニケの単独行動が多かったりするし、そのときククリが何をしていたかっていうのは興味があるわ。
原作は主にニケ視点で進むが、ククリとは別行動のシーンも結構あるんだよな。 オババの家にニケがやってくる前、キタの森でニケが果物を探しに行った時、キタの町で魔物に攫われた時など、このときククリがどうしていたのかククリの視点で見られるのはなかなか新鮮だ。
全体的には同じ流れを辿るため使い回しとなっている部分も多いのですが、主人公を変えることで新たな楽しみが生まれています。 容量に負担をかけずに密度を濃くしようとした工夫が実を結んでいます。
さて、みどりちゃんも気になっているミニゲーム紹介の時間です。 本作でプレイできるミニゲームは以下の10種類ですね。
反射神経を使うものから記憶力を使うものまで、バリエーションは豊富だ。 難易度もひとつではなく複数用意されており、ほどよく遊び込める。
ひととおりやってみたけど『ボンバーうぉー』や『ラストバトル』みたいにアクション性が高いものは少し難しめかも(^^;) もうちょっと練習したいわ。
ミニゲームを単体でプレイするゲームモードもありますよ。 難易度を選んで好きなだけ腕を磨いてください(^^)
スーパーゲームボーイで起動した場合に限るが、ミニゲームは2人対戦も可能となっている。 パーティゲームとしても楽しむことができるぞ。
というわけで、『魔法陣グルグル』原作序盤のエピソードを深く楽しめるゲームでした。
ストーリーはもちろんなんだけど、ドット絵のクオリティも申し分ないしファンも納得の出来栄えなんじゃないかしら。
敢えて言うが、問題点もないわけではない。 イベントシーンはほぼ台詞のみで話が進められるのだが、せっかくのコミカルで面白い掛け合いも絵がないため魅力がやや減少してしまっているのは否めん。
ああ、それはそうかも(^^;)
私は原作でのシーンが頭に浮かんじゃってたから気にならなかったけど、知らない人からすれば何が起きてるのかわからないところも多そうね。
そうした点も含めてファン向けのゲームと言えますね。 とは言えこうした原作付きゲームをファン以外が買うことはあまりないでしょうし、最も期待して買うのはファンなのでこれはこれでいいと思います。
うむ、原作付きのゲームとして当時のゲームボーイでやれることはやり切っている。 ファンの満足度は高かったんじゃないかと思うぞ。
原作は第一部が完結したことだし、そこまでのエピソードをまとめてゲームにしてくれたらいいのにね。いつか作ってくれないかしら。
初稿:2024年05月25日