ファミコンでは多様なスポーツゲームがリリースされていますが、卓球を題材とした唯一のゲームソフトがこちらの『スマッシュピンポン』です。
任天堂はファミコンの初期から『ベースボール』、『テニス』、『サッカー』のような多くの定番スポーツゲームを製作しており、本作もそれら一連の作品として認識されることが多い。
ふふん、何を隠そう私は元卓球部なのよ。このゲームもしっかり遊んでいたわあ!
ラリーの応酬。
こちらが試合中の画面です。 使われている色は少ないですが、選手側の視点を表現していて臨場感がありますね。
選手の姿は描かれず手とラケットだけが浮いた表現となっているが、これは表示能力の都合ゆえだろう。
見慣れないと不気味に感じる人もいるかもね。 だけど実際に動いているところを見ると、手だけなのに感情豊かなのよ。 ラケットを振れば全身の動きが見えるような錯覚さえ覚えるわ。
悔しがってラケットを伏せたり、細かな仕草の作り込みが光っています(^^)
操作方法もまたユニークだ。 卓球は英語でテーブルテニスと言ってその名の通りテニスに似たところがあるスポーツなのだが、操作形態は一般的なテニスゲームと一線を画している。
だいたいのテニスゲームではプレイヤーキャラがボールを追いかけて、ラケットが届く範囲に来たらタイミングよくボタンを押して打ち返す形になっていますよね。
ところが、本作の場合ラケットの移動は自動だ。全くこちら側で操作する必要がなく、反撃に適した場所に動いてくれる。
これは卓球競技の特性に合わせたんだと思うわ。 コートが狭いっていうこともあるけど、卓球はなにしろ攻防がスピーディーなのよ。 コントローラーの操作でボールを追いかけようなんて難しいことはしないで、タイミングよく打つことに重点を置いたんでしょうね。
上手く打てるとそれだけで嬉しいですからね。 こうして移動の操作を省いたことで空いた十字キーをショットの打ち分けに当てています。
まず十字キーの左でドライブ、右でカットが打てる。 ショットはこの2つが基本だ。
ドライブは前方向に回転のかかった速い球、カットは逆方向に回転のかかった遅い球のことです。
卓球はボールに回転を加えて軌道を操るテクニックが重要だから、そこが再現されているのはわかってるわね。 少ないボタンをうまく使っているわ。
またAボタンではフォアハンドとバックハンドの切り替えができます。 上手に使えば逆サイドに来た球を楽に返すことができますよ。
そして十字キーの上ではスマッシュを打てる。 チャンスボールが来たら全霊を込めた渾身の一撃を叩き込んでやろう。
チャンスボールは高く弾んだ打ち頃のボールのことよ。 『ヒュ〜ン』って音がするから見逃すことはないわ。 スマッシュを決めた瞬間は最高に爽快よ!(^^)
ですがスマッシュを打ち返すことも可能です。 スピードが速いのでかなり難しいですが、審判のコールを聞くまでは気を抜かないようにしましょう。
それとこれは言っておきたいのだが、本作はサーブを打つのがやや難しい。 初心者はサーブミスを連発してあっという間に自滅しかねないんだ。
Bボタンでボールを跳ね上げてから十字キーの左右で打つのですが、この打つタイミングを知っていないと失敗しますね。 何度も空振りして嫌になってしまった人もいるかもしれません(^^;)
コツを言うとね、跳ね上げたボールが落ちてきてコートの白線と重なるタイミングで打つといいわ。 うまくできない人はこれで試してみてね。 このタイミングを体で覚えたら見なくても打てるようになるわよ。
落ちてきたボールと白線が重なるあたりで打つといい。
タイミングを取って打ち合う本作のシステムはシンプルなものだが、没入度は高い。 スピーディーな打ち分けの判断や操作をリズム良く行うことは楽しく、やめどきを見つけるのが難しいほどだ。
単純に、操作すること自体が面白いのよ。 打球音も気持ちいい音を出しているし、ラリーの応酬が続くと陶酔感すら覚えるくらいだわ。
打ち分け、揺さぶり、ラリー、そしてスマッシュと、どこを取っても再現度が高く、卓球の魅力が詰め込まれたゲームです。 サーブの打ち方が難しくて最初は苦労するかもしれませんが、それを乗り越えた先にある気持ちよさを味わってみてください(^^)
本作は任天堂からの発売となっているが、開発を担当したのはコナミである。 1985年にMSX用としてリリースされた『コナミのピンポン』を移植したのが本作なんだ。
へえ、そういえばタイトル画面にもコピーライト表記があるわ。 コナミはディスクシステムへのリリースを精力的に行っていたけど、本作も隠れた1本なのね。
移植にあたり、登場していたコナミのキャラクターは任天堂のキャラクターに差し替えが行われています。
タイトル画面に出てくるディスくんや観客席にいるドンキーコングがそうだな。 小さなところだが、任天堂らしいゲームとして馴染ませるのに一役買っている。
ラウンドの間に踊りを披露するディスくんと観客席のドンキーコング。
マリオじゃなくてドンキーコングを選んだのは渋いわね。 たぶんファミコンで最後にコングが出演したゲームよこれ(^^;)
ラケットが自動追尾するというシステムはこの後も他社の卓球ゲームで採用されることになり、一種のスタンダードとなります。 本作の完成度の高さを表すエピソードですね。
初稿:2022年07月18日
改訂1:2024年05月18日