1986年の秋頃、ファミコン向けのゲーム雑誌には妙な響きの新作タイトルが掲載された。 それはアイレムのディスクシステム用ソフト『きね子』だ。 名前からどんなゲームなのかは全く想像できないが、その語呂の良さによって読者の印象に強く残った。
初めの頃はゲーム画面も載ってなくて、『ファンシーパズルゲーム』っていう情報くらいしかなかったものね。 人名っぽいけどそれにしては珍しい名前だし、一体どんな内容なのか続報が気になって仕方がなかったわ(^^;)
『ファミリーコンピュータMagazine』1986年No.15より引用。
続報で判明したその正体はいわゆる動画のジグソーパズルと呼べるものでした。 同時期にソニーからMSX用ソフトとして発売された『キネティックコネクション』(Kinetic Connection)の姉妹作であり、きね子とはこの略称を用いたものだったんですね。
下側のピースを動かして上側のキャンバスに嵌めていく。
というわけで、こちらがきね子のプレイ画面です。 上部に大きなキャンバスが、下部には小さな複数のピースが配置されています。
これらのピースを組み合わせると一つの映像になるってわけね。 ひとつひとつキャンバスに嵌め込んでいくんだけど、一般的なジグソーパズルのような凹凸がなくて全て同じ形をしているし、あまつさえ上下左右の反転まであるから全体的に難易度は高めよ。
ピースをじっと見ていると、大きくアニメーションするものとそうでないものがあることがわかる。 まずは大きいものに注目してそのピースの正しい配置を特定していくといいだろう。
動きが同期するピースを繋げよう。
ピースを動かしてくっつけてみて、アニメーションがぴったり同期すればその組み合わせは正解です。 ズレなく合わさった瞬間は気持ちいいですね(^^)
一見すると問題はないように見えるが…。
えーと、これでうまくできたかしら?
いや、完成したら自動的にクリアになるはずだ…。
アニメーションが噛み合っていなかった。
やっぱりグチャグチャじゃないか!(´Д`;)
あれー?(^^;)
その瞬間は完成したように見えても、一連のアニメーションで見るとどこかがズレているということもあります。 目を皿のようにして地道に整えていきましょう。
完成すると『GOOD!』の文字が。
今度こそ完成ね、苦労したんだから感動もひとしおよ(^^)
本作にはこのようなムービング・パズルゲームが10ステージ収録されている。 せっかくなので全ての完成図を見てみよう。 なおステージによっては左右や上下が反対でも正解になるものもあるぞ。
ステージ1:シーブリーズ
こちらは先程もプレイしたステージ1の『シーブリーズ』です。 穏やかな湘南の海をヨットが通り過ぎていくシーンですね。
ステージ2:トミー・ザ・パイロット
ステージ2は左から右へ複葉機が飛ぶ『トミー・ザ・パイロット』。 背景が空の青一色なのと、複葉機の飛ぶ高さが毎回ランダムなせいで迷うところが多いのよねえ。
ステージ3:ポンポコダヌキ
ステージ3は『ポンポコダヌキ』だ。月夜にタヌキが踊るぞ。 背景が黒一色なため、どれをどこに置いたのかとても迷いやすく難しめだ。 上段・中段・下段とそれぞれ違うものが配置されてるのがせめてもの救いだな。 比較的判別しやすい下段のタヌキから埋めていくのがいいだろう。
ステージ4:アクアリウム
優雅に泳ぐサメ達を描くステージ4の『アクアリウム』です。 どの鮫も姿かたちは同じなので何匹いるかもわからないところから始まります。 動き始めになる両サイドのピースからアタリを付けていくといいでしょう。
ステージ5:SF インベーダー
ステージ5は『SF インベーダー』。 どこかの星に降り立つエイリアンたちよ。 地面とUFOのおかげでピースを置く位置は絞りやすいけど、エイリアンが小さくて目が疲れるわ〜(^^;)
ステージ6:タップ・タップ・タップ
ステージ6は水面に立つウォータークラウンの『タップ・タップ・タップ』だ。 広がる波紋のスピードを捉えるのが難しいが、中心から離れるほど輪が大きくなることに気付けば対処はしやすいだろう。
ステージ7:メイジアン
閉ざされた迷宮、ステージ7の『メイジアン』です。 複雑な迷路を謎の機械生物が闊歩しているので、移動経路が繋がるようにピースを配置していきましょう。
ステージ8:サイエンス・ラボ
ステージ8は『サイエンス・ラボ』。 ミクロの世界の分子配列を整えましょう。 大きな異分子が3つ、ぶつかり合いながら転がり回っているわ。 スピードと角度の見極めが鍵になるわね。
ステージ9:ケイオス
ステージ9は『ケイオス』だ。 モニタに映し出される走査線のようだな。 線の速度が一致しているピースを探して組んでいけばやりやすい。
ステージ10:リコレクション
最後のステージは粉雪の舞う『リコレクション』です。 切なげに流れるBGMがノスタルジーを刺激して切ない気持ちになりますね。
美しさに見とれてしまいそうだけど、このステージの難しさは他と桁が違うわ!(´Д`;) ひとつひとつの粉雪の粒が無軌道に舞い散るものだからどれもこれも同じようなピースばっかりになっていて、これを見極めるには相当な動体視力あるいは根性が必要よ。
めでたく全10問をクリアするとエンディングだ。 本作のパズルは基本4×4の16ピースだが、一度クリアすると4×6の24ピースと6×8の48ピースモードが解禁される。 更なる難易度を求める諸氏はチャレンジしてみてほしい。
リコレクションの48ピースをクリアできたら自慢していいわよ、ほんと。
いったいどこから手を付けたらいいのやら…。
まずはアニメーションを使ってジグソーパズルをするっていう発想に脱帽ね。 やることは地道で地味なんだけど、パズル好きなら時間を忘れて熱中できる魅力があるわ。
ジグソーパズルは1767年にイギリスで生まれたと伝えられる歴史ある遊びだが、きね子はそこにアニメーションという要素を取り入れたことで新たな可能性の領域を開いた。コンピュータが登場し、それを活用することによってブレイクスルーが起きたんだ。
初めて触れた時はコンピュータによって既存の遊びが進化したことを強く実感したものです。 ゲームの可能性を感じてワクワクさせられましたよね(^^)
初稿:2020年04月30日
改訂1:2024年07月04日