ファミマガ1990年4月6日号は通算100号記念の特大号。
1985年7月に創刊された世界初のファミコン専門誌『ファミリーコンピュータMagazine』、通称『ファミマガ』。 情報収集力に優れ新作や攻略の記事が充実していたことから人気が高く、後発のゲーム雑誌が数多く登場しても長らくトップシェアを得ていた。
ファミマガは1990年の第7号をもって通算100号を迎え、その記念に3つのスペシャル企画を打ち出しました。
3つのスペシャル企画。
1つめはディスクシステム用ソフト『香港』の発売、2つめはファミマガディスク大賞の開催、そして3つめはコナミと共同でRPGを製作する芸夢工房よ。
これまでファミコンソフトの紹介・宣伝を行っていたファミマガが、100号到達を機に制作にも乗り出したというわけだ。
特にファミマガDisk大賞はゲームシステムの基幹となるアイディアを読者からコンテスト形式で募集するもので、大賞の特典は賞金50万円とアイディア料、そしてそのゲームが実際に市販されるという実に豪華なものでした。
自分の考えたゲームがファミコンで発売されるかもしれないと思うと胸が躍るわよね(^^)
ファミマガDisk大賞の受賞作品はこの発表と同時に立ち上げられたファミマガディスクというレーベルでリリースされることとなっていた。 当レーベルはシンプルだがのめり込めるというのがコンセプトで最終的には全6作がリリースされており、その第1弾となったのがスペシャル企画の1つ目である『香港』だ。
様々な形に積まれた麻雀牌。
本作は麻雀牌を使用したステージクリア型のパズルゲームとなっている。 麻雀牌を決められた順番に取っていき、ミスせずに全て取ることができたらクリアだ。
その順番とは『東→南→西→北→白→發→中』の順です。 風牌→三元牌の順になっているので麻雀に馴染みがあればすぐに覚えられるでしょう。
だけど、逆に麻雀に馴染みがないと覚えづらいかもしれないわね。 未経験者が『東南西北』(とんなんしゃーぺい)を『東西南北』(とうざいなんぼく)と間違えちゃうのはよくある話よ(^^;)
しかしその順番ならどう取っていっても良いというわけではない。 注意すべきことは『支えを失った牌は落下する』ということだ。 地面に接地している最下段の牌を除く全ての牌は、他の1つ以上の牌に支えられていなければならないんだ。
こんな形でもセーフ。
それが絶対的な法則だから、例えばこんな状態になっても大丈夫なの。 本物の牌でこれを再現したら確実に崩れてしまうけど、このゲームでは許されるのよ。
物理法則には頼らない。
支えを失うと牌が崩落してしまいゲームオーバーです。 物理法則に沿っているのかそうでないのか不思議なルールですが、コンピューターゲームだからこそ実現できる遊びですね(^^)
ステージクリアすると孔雀が祝福してくれる。
では本作に収録されている全10パターンの配置を軽く紹介していこう。
色々なパターンをプレイするとわかってくるんだけど、パターン9、10みたいに隙間の多い形状は最初に取れる場所が少ないからかえって攻略法がわかりやすいのよね。 ほどよく隙間の開いたパターン7あたりが一番難しいと思うわ。
取れば崩れると一目でわかる場所が増えるので、正解ルート導きやすくなっていますね。 製作者さんもパターン形状と難易度のバランスには苦労したんじゃないでしょうか。
また本作は行き詰った際のサポートも充実している。 それがヒントコマンドとバックコマンドだ。
ヒントコマンドは次に取れる牌がどれか教えてくれるのよ。 どうしても見付けられないときに使ってみましょう。
もうひとつのバックコマンドは手順を戻すことができます。 10回までと使える回数に限りがありますが、ヒントを見ても取れるものがなくなってしまった場合の最終手段ですね。
取れる牌もなくなりバックコマンドも使い切ってしまったら…その時はもう諦めるしかない。ギブアップしてまた次回頑張ろう。
既成のパターンで物足りなくなったら、コンストラクションモードでパターンを自作することもできます。
コンストラクションにも2つのモードがあって、牌配する位置だけ決めて配牌はCPUに任せるモードと 配牌まで自分でするモードに分かれているわ。それぞれ5面ずつセーブしておくことができるわよ。
自由な発想で面白いパターンをつくろう。
自分で作ったパターンを遊ぶのも良いし、友達や家族など誰かに遊ばせるのも良い。 本作の基本パターン数は10個と物足りないところがあるのだが、このモードの存在により長く遊ぶことができる。
『香港』はファミマガ読者投稿のアイディアではありませんが、過去に姉妹紙であるMSX専門誌『MSX・FAN』に投稿された読者プログラムが基となっています。製作者は当時高校生だった西山鯛介さんで、このゲームシステムは友達が麻雀牌をピラミッドの形に積んでいたのを見たことで思いついたということです。
『MSX・FAN』1988年3月号より。
MSXに限った話ではないが、パソコンユーザーにとってゲームは買うだけでなく自ら作るものでもあった。 もちろん中には買って遊ぶだけの人もいたが、多くの人は自作したり、雑誌に掲載されたコードを打ち込んだり、またそれを改良したりして遊ぶのが普通だった時代だ。
ファミコンでも簡単なゲームを作ることができるファミリーベーシックという周辺機器が40万台を売り上げているけど、ファミコンのメインターゲットである子供たちにはプログラミングは難しかったでしょうから自分の考えたゲームを作るっていうのは憧れだったでしょうね。
だが、プログラミングができなくてもゲームのアイディアは出せる。 誰だって『こんなゲームを遊んでみたい』と夢想したことはあるだろう。 ファミマガDisk大賞はそうした欲求の受け皿となったんだ。
『香港』はそうしたアイディアの募集にあたり、ひとつのモデルケースとしての役割を与えられていました。 一見常識外れのアイディアでも面白ければゲームとして成り立つということを教えてくれています。
初稿:2019年04月24日
改訂1:2024年07月20日