『パペリーノ』。イタリアではこのように呼ばれる有名なキャラクターが誰のことかわかるかい?
パペリーノ…?うーん、いえ、聞いた事がないですね。まるで見当が付きません。
でしたら少しヒントをあげましょうか。 パペリーノの由来となった言葉『パペラ』はイタリア語で『アヒル』を意味しますわ。
有名なアヒルのキャラクター…あ、もしかして『ドナルドダック』ですか?
御名答、パペリーノことドナルドダックはイタリアで最も人気のあるキャラクターなのさ。 書店に行けば彼が表紙を飾る書籍がたくさん並んでいるし、街角では彼の着ぐるみを見かけることだって少なくないよ。
日本でも人気がある方だと思いますけど、イタリアではそんなに突出してるんですね。 何か特別な理由があるんでしょうか。
根は善人だけど短期で暴走する傾向があるドナルドは真面目さを感じさせなくて、そこがイタリア人の気性に合っているという話があるね。
それとイタリアのシンボルカラーは青ですから、青色の服を着ているドナルドには親近感があるのかもしれません。
国民性に合っていることが広い人気に繋がっているんですね。 イタリアにドナルドがいる光景、私も見てみたいです(^^)
さて本題だが、そんなドナルドがイタリアで活躍するファミコンのゲームソフトがある。 その名も『ドナルドダック』、今回はこちらを紹介しようというわけだ。
アメリカから遠く離れてイタリアへ。
本作に出演するダックファミリーの5名。
今回イタリアに上陸したダックファミリーは計5名。 ドナルドダックをはじめ、彼の恋人のデイジーダックと三つ子の甥たちデューイ、ヒューイ、ルーイだ。 彼らは様々な観光名所で6つの競技を執り行うよ。
なお5名と言いますが、三つ子たちは運営役としての役回りになりますので実質的な参加者はドナルドとデイジーの2名だけとなっています。
せっかくの催し物なのに参加者が2名とは少ないですね…。ファミコンのスペックの都合なんでしょうけど、ここは恋人同士の親睦を深めてもらおうという甥っ子たちの計らいと解釈しておきましょう。
競技名はプログラムによると『みのむし』、『くつなげ』、『ホッピング』、『おとしっこ』、『ピザはこび』、『かわとび』の6種です。 どれもユニークですわね。
開催される6競技はどれも個性的でユニークだ。
名称からはどんなことをするのか想像しにくいものもいくつかありますね。俄然楽しみになってきました(^^)
なお本作のゲームモードには各競技を個別に遊ぶ『セレクトゲーム』と6種類全てを3周行ってその合計点を競う『トータルゲーム』の2つがあるが、今回はトータルゲームの進行に沿って紹介させていただくよ。
皮袋に入ってみのむし競争。
初めはベスビオ火山を臨む街並みで行うみのむし競争だ。 皮袋に入ってジャンプしながら進む競争だね。ジャンプの操作はAボタンだよ。押すときに少しだけ長めに押すとぐっと踏み込んで飛距離が出るようになるから活用するといい。
ふむふむ、ただ連打すればいいというわけではないんですね。どのリズムでボタンを押せば速く進めるか追求してみたいところです。
地面に空いているマンホールに引っかかると転倒してタイムロスになってしまいますので、進むルートにも気をつけましょうね。 ゴール時の残りタイムに応じてポイントが加算されますわよ。
危険なマンホール。
長靴の遠投。
この競技では長靴を投げて飛距離を競いますわ。 十字キーをぐるぐる回して、タイミングよく投げると遠くまで飛んでいきます。 試技を2回行い、飛距離に応じたポイントが加算されますわ。
これは手を放すときの角度が大事ですね。真上や後方に投げちゃうと失敗です。
どうして長靴なのかなって思ったけど、イタリアの国土の形を長靴やブーツに例えることがあるからそれが由来なんだろうね。
悲痛なゼロの裁定。
ホッピングによる障害物競走。
ホッピングはバネの力を利用して飛び跳ねる一本足の玩具です。 目の前に高い壁がありますけど、ひょっとしてこれを飛び越えるんでしょうか?
まさしくそのとおりだ。壁は4つ並んでいて、飛び越えた数に応じてポイントが加算されるよ。
バネが縮んだタイミングでAボタンを押すと反動で高く跳ねます。 全ての壁を休みなく連続で飛び越えられると気持ちいいですわよ(^^)
壁に激突し、痛そうに吹き飛ぶドナルド。
突け、投げろ、落とせ!
水の都ベニスの川面で行われるのは壮絶なサバイバルだ。 『おとしっこ』は揺れるゴンドラの上で1対1となり、揉み突き合いながらお互いを川に落とし合うゲームだよ。 Aボタンの連打で相手を突き飛ばして、船縁まで追い込んだら追い落とすチャンスだ。
もし追い込まれてしまってもBボタンの投げで反撃ができます。 ですがゴンドラの揺れに合わせて相手より高い位置にいる状態でないと成功しにくいので、自分のいる奥行きは常に調整しておくといいですわ。
今までの競技に比べると暴力的な要素が強くなりましたね(^^;) でもこれはこれで短編映画のドナルドらしいどつき合いができて楽しいです。
高さの位置取りを誤ると投げ負けやすい。
両手に積まれたピザの行方は。
ピサの斜塔前でピザ運びですわ。 20枚の高さに積まれたピザをなるべく落とさないようにしてゴールまで運びましょう。 ゴールした際の残り時間とピザの枚数に応じてポイントが加算されます。
少し歩いただけでグラグラと揺れ動くピザを見ているとドキドキしますね(^^;) 焦り過ぎない程度に急ぎたいです。
進行方向の反対側、つまり左側のキーを入力すると少しだけ揺れが落ち着くのが早くなる。 よって数歩歩いては左キーを入れて静止する、という操作を繰り返すのが基本になるだろう。
スピード厳禁。
最後の難関。
1本の長い棒で川を跳び越えよう。Aボタンで連打で助走をつけ、川の手前に差し掛かったら次はBボタンを押して川の棒を突き立てるんだ。
棒が垂直になったところでBボタンを放し、そのままの勢いで向こう岸に到達できれば成功ですね。 ひとつでもタイミングを誤ると転んだり川に落ちて失敗してしまいますわ。
この競技だけちょっと操作が複雑ですね。それに棒を離すタイミングもシビアですし、難くてめげちゃいそう(^^;)
棒を離すタイミングを誤るとずり落ちてしまう。
まあしかし、かわとびはトータルゲームにおいて貴重な得点源だから是非とも頑張ってコツを掴んでほしいところだね。
初めにトータルゲームは3周行うと言いましたが、各周回にはクリアポイントが設定されているんですの。 6種目終わった時点でのポイントが1周目では2,000、2周目では5,000、3周目では10,000を超えていないとゲームオーバーとなってしまいますわ。
そういうことなら、一発勝負の競技は特に成否が重要になってきますね。
最終的なポイントが10,000〜11,999なら銅メダル、12,000〜14,999なら銀メダル、そして15,000以上なら金メダルが貰えるから、是非とも金メダルを目指してほしいな。
ゴールドメダルの輝きを目指して。
さて、ファミコンの『ドナルドダック』はどうだったかな?
競技の種類が他ではあまり見ないタイプのユニークなものばかりで面白かったです。 シンプルで遊びやすいだけでなくスコアアタックの要素があってやりごたえもありますね。何度でも遊べちゃいますよ。
グラフィック面に目を向けると風光明媚なイタリアの風景の描き込みは見逃せませんわね。 本物が持つ美しさを見事に再現していますわ。
ドナルド達のリアクションもアニメで見るような派手さがあって良いですよね。 特に失敗した時の転び方はドナルドらしさが出てて素晴らしいと思いました(^^)
映像作品の中でのドナルドはその負けっぷりの良さが最大の魅力と言っても過言ではないからね。 そういったところもしっかり盛り込んでくれているのはファンにとって嬉しいポイントだと思うよ。
複雑なゲーム内容ではないこともあり、パーティゲームにもちょうどいいのではないでしょうか。 ファン同士で対戦すると特に盛り上がりそうですわよね。良く出来た作品だと思います。
ここからは余談になるけれど、イタリアに上陸したのはドナルドファミリーだけではないんだ。 少し遅れてスヌーピーとその仲間達もイタリアに上陸を果たしている。
スヌーピーと長兄のスパイク、そして親友のウッドストック達ですわね。 その活躍はNintendo Entertainment System向けにアメリカでリリースされた『Snoopy's Silly Sports Spectacular!』というタイトルで見ることができますわ。
NES用ソフトの『Snoopy's Silly Sports Spectacular!』。
スヌーピー in イタリア。
SACK RACE
BOOT THROWING
POGO
OVERBOARD
PILE OF PIZZA
RIVER JUMP
スヌーピーもドナルド達と全く同じ競技を…。これって、もしかして…海賊版?(^^;)
海賊版なんかじゃなくてきちんと正規の流通でケムコからリリースされたものだよ。 このNES版ではキャラクタースキンがスヌーピーたちに差し替えられているんだ。
アメリカではカプコンUSAがディズニーのゲームを製作する権利を取得していまして、日本版をそのままアメリカで売り出すことはできませんでした。 キャラクターの変更はそれ故の措置ですわね。
なるほど、そういう理由があるんですね。
これらのゲームは元を辿ればコモドール64向けの『Alternative World Games』というゲームを原作としている。 ファミコン時代のケムコはオリジナルの作品を制作する傍らアメリカからゲームソフトの版権を買ってローカライズするという手法を取っていて、ドナルドダックもその一環として制作されたんだ。
ケムコの素敵なところは、単に移植するだけではなくてしっかりと遊びやすく受け入れられやすいようにアレンジを入れてくるところですわね。 ファミコンは日本では子供向けのものでしたので、それに合わせて子供人気のあるキャラクターを起用して競技内容もシンプルなものを抜粋してまとめています。
ゲーム性がシンプルなのでドナルドという柱を立てたのは好判断ですね。強いキャラクター性がゲームに彩りを与えていてユーザーの目にも留まりやすかったのではないかと思います(^^)
販売地域やターゲット層に沿ったアレンジを施すローカライズの上手さは見習いたいよね。
初稿:2019年01月05日
改訂1:2025年05月14日