眠り薬と赤い水

魔法騎士レイアーススーパーファミコン|ゲームレビュー

パッケージ表

パッケージ裏

ROMカセット

タイトル画面

スーパーファミコン版

肴倉もろみ

パンドラボックスが手がけた『魔法騎士レイアース』のゲーム化3作品のうち、既に紹介したゲームボーイの2作品はオリジナルストーリーでした。

ピータン

残るスーパーファミコン版はというと、原作第一章のストーリーに沿ったものとなっている。

更科みどりこ

つまり原作の追体験ができるってことね。 ファンなら当然ストーリーを知ってるだろうけど、やっぱりゲームだからこそできる体験ってあるものよ。 このスーファミ版はそれを教えてくれたと思うわ。

魔法騎士(マジックナイト)招喚

◆ストーリー◆


東京タワー。
今ここに、不思議な力によって、三人の少女たちがひきよせられた。 獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風。
何のへんてつもない、ごく普通の中学生だった三人が出会った瞬間、絡められた運命の糸がまばゆくはじけた。
東京タワーが閃光に包まれる。

……この『世界』を助けて
……伝説の『魔法騎士』たちよ!!

美しくも不思議な声が、閃光の中で三人の少女たちに訴えかける。 眩惑する閃光が消えたとき、三人の少女は見知らぬ世界の”上空”にいた。 火山、海、空に浮かんだ山。明らかに東京とは異なる世界の空を、困惑しながら三人の少女たちは落ちていく。 次の瞬間、少女たちは、美しい翼を持つ巨大な魚の背に落ちた。 いや、受け止められたのだ。 巨大な『飛び魚』は少女たちを背に乗せたまま、しばし空を飛行したのち不思議な世界の大地へと降りる。 そしてそこには、杖をたずさえたひとりの少年が、静かに立っていた。

「おまえたちが伝説の『魔法騎士』なのか?」

少年の外観は10歳前後でしかなかったが、その落ち着いた口調と鋭い眼光からは、不思議な風格が感じられた。
光が、少年に問いかける。

「ここはどこなんだ!!一体わたしたちはどうしてここに!?」
「……ここは異世界『セフィーロ』。おまえたちは伝説の騎士『魔法騎士』となるべく、エメロード姫に招喚されたのだ……」

光の問いかけに、少年は語りはじめるのだった。

(取扱説明書より)

導師クレフ。見た目は少年だが、実際には745歳。

肴倉もろみ

導師とは素質ある者に魔法を授ける役。 セフィーロで最高位の導師であるクレフは、光・海・風の3人が危機に瀕したこの世界を救うために招喚された魔法騎士であることを伝えに来たのです。

ピータン

セフィーロは信じる心が力となる世界。 柱であるエメロード姫の祈りと意志の力によって平和と秩序を支えていたが、神官ザガートによってエメロード姫は幽閉されてしまい、魔物が跋扈するようになったという。

更科みどりこ

世界を想うエメロード姫の呼びかけで三人は招喚されたというわけね。 その願いを果たさないと東京に帰ることもできないっていうし、こうなったら成り行き任せね。

ザガート側の暗躍。

肴倉もろみ

一方ザガートも魔法騎士が招喚されたことに気づいており、刺客を差し向けます。

光は炎系の魔法を覚える。

ピータン

光はクレフより魔法を授かるが、このとき刺客が迫っていることを察したクレフは急いで三人を逃がすぞ。

光は炎系の魔法を覚える。

更科みどりこ

そうして送り出されたけれど、時間がなくて光以外の二人は魔法を覚えてないままだし、これからどうなっちゃうのかしら!

創師プレセア

創師プレセア。世界で唯一、魔法騎士の武器を創ることができる。

肴倉もろみ

クレフが別れ際に訪ねるよう伝えた創師プレセア。 彼女は魔法騎士たちに武器を作ってくれると言います。

ピータン

しかし魔法騎士の武器を創るには伝説の鉱石『エスクード』が必要だという。 エスクードで作った『成長する武器』は魔神をよみがえらせる鍵なんだそうだ。

更科みどりこ

でも魔神ってなんなのか今は教えてくれないのよね…。 とにかくエスクードを手に入れるために沈黙の森に行くことになるわ。

肴倉もろみ

さて、このあたりでレベルを上げておきましょう。 沈黙の森は魔法が使えない場所です。 本作は魔法が非常に強力なので、森の外で経験値を稼ぐのが効率的なんですね。

戦闘画面はクォータービュー。光の赤い稲妻が炸裂!

ピータン

現時点で魔法が使えるのは光だけだが、全体攻撃の魔法があるからサクサク倒していける。 このゲームはレベルが上がりやすく、それを踏まえた戦闘バランスとなっているからガンガン戦って強くしておかないと後で困ることになるんだ。

更科みどりこ

キャラクターのアニメーションや掛け声のボイスもちゃんと入ってるわ。 ゲームボーイでもやってたことだけど、やっぱりスーファミは絵も音もきれいだわね。

伝説の魔神

ピータン

この後はエスクードを入手して武器を作ってもらい、3体の魔神を開放する筋書きになっていく。

『海神セレス』『空神ウインダム』『炎神レイアース』。普段は動物の姿をしているが、その正体は…。

肴倉もろみ

後で知ることになりますが、このセフィーロには異世界から招喚された魔法騎士が魔神の力を借りて戦うという伝説があるんです。 実は魔神の正体は巨大ロボットで、乗り込んで戦うのには驚きました! 少女漫画でこのような展開は意外でしたよね(^^)

更科みどりこ

まあ、このゲームだとそこまでは再現できてなくて召喚魔法のような扱いになってるけどね(^^;) でもとっても強くて派手だし、伝説に恥じない力を見せてくれるわよ!

レイアースの叫びが赤い粒子となって敵を襲う!

ピータン

魔神を開放すると、最後の舞台であるザガートの居城へ乗り込むことになる。

原作準拠

更科みどりこ

武器を創って、3体の魔神を開放して、最後の敵を倒す。 改めてストーリーを簡単にまとめるとこれだけなのよね。

肴倉もろみ

原作である第一章は単行本にして3巻分しかありません。 漫画で読むと激動の物語展開に引き込まれて短いとは思わないのですが、 それをそのままゲームにしてしまうとどうしてもイベントの少なさが目につきます(^^;) わずかにアニメ版の設定も取り込まれていますが、ボリュームアップにはあまり貢献していませんね。

新装版の単行本。現在も順調に版を重ねている。

ピータン

行ける場所も町が3つでダンジョンが7つだけだしな。 そのダンジョンも大半が迷いにくい構造でさほどプレイ時間はかからない。 原作ファンの層に合わせての調整だろうが、エンディングまでにかかる時間はより短くなる。

更科みどりこ

そもそも原作ファンならストーリーは知り尽くしてるから、オリジナル要素もなくでただ再現だけされてもプレイする動機にはいまいち欠けるのよね…。 それに『レイアース』第一章は終盤の展開がショックすぎたから、そのシーンをわざわざ見たくないってこともあって最初購入は見送っていたわ(´Д`;)

肴倉もろみ

ですが、本作の見どころはその終盤の展開に集約されています。 その結末は当時を知るファンの人にこそ見届けてほしいと思うんです。

更科みどりこ

そう、エンディングが原作と違うのよ。 もろみからそれを聞いてプレイする気になったのよね。

ピータン

というわけでここから先はエンディングのネタバレを含む。 知りたくなければここで引き返すがよかろう。

真なる願い

VS魔神ザガート。

肴倉もろみ

決意を込めて魔神ザガートを倒した魔法騎士たち。 これでエメロード姫の願いを叶えることができたと安堵しますが、やっと見つけ出した姫は彼女たちに向けて敵意を露わにします。

その瞳は憎しみを隠さない。

ピータン

ここでエメロード姫から告げられたのはあまりにも意外な事実だった。 彼女はザガートを愛してしまった。セフィーロが不安定になり魔物が現れようになったのは、平和のために祈ろうとしてもザガートのことを考えてしまうようになったからだったんだ。

更科みどりこ

世界を守るためには自分が死ななければならない。 だから、自分を殺してもらうために魔法騎士を呼んだのよ。 柱はセフィーロの人間が危害を加えることも、自ら命を絶つこともできない。 柱を殺すことができるのは異世界から招喚した魔法騎士だけ…。 それが魔法騎士の本当の役目だったのよ。

肴倉もろみ

ザガートは姫を幽閉したのではなく、自ら身を隠した姫を魔法騎士から守るために活動していたのです。 なんということでしょう…。

エメロード姫の悲壮な願い。

ピータン

姫に残った僅かな理性による懇願を聞き、3人は振り切るようにエメロード姫を討つ。 原作ではその瞬間に3人は東京へと戻り、光が慟哭を上げて物語は幕を閉じる。聞いての通り壮絶な展開だ(´Д`;)

更科みどりこ

またね、漫画版だとこのあたりの展開は2話くらいでスピーディーに進められていたけど、いざゲームでやると指が重くなるんだわ(´Д`;) 2人の想いは知ってるし、ただでさえ光達と同じで戦うのは嫌だって気持ちがあるのに、ザガートもエメロード姫もHPが多くって戦いが長引くんだもん。

肴倉もろみ

早く終わって!って気持ちになりますよね(^^;) かといって相手の攻撃も強力で、明確な殺意が込められているのがわかるのでこちらも全力で迎え撃たないと負けてしまいます。 このあたりの葛藤の深さはプレイヤーが自ら操作するゲームならではですね。感情移入度が違います。

ピータン

原作での戦闘描写は短く、ともすればあっさり倒されたようにも見える彼らだが、 本作においては全力での戦いを余儀なくされるために憎しみや悲しみなどの感情表現がより重く感じられる。 この最終決戦における一連の展開だけでもゲーム化した意義はあるだろうな。

エンディング

プレセアとの意外な再会。

更科みどりこ

さっきも言ったけど、本作では原作漫画とは違った結末が用意されているわ。 魔神の力で3人が飛んだのは東京じゃなくてエメロード城の中。 そこではクレフやプレセア、他にも旅で出会った人たちが待っていてくれたの。

肴倉もろみ

原作では何も言わずに別れてしまった人たちとこうしてまた会えるのは嬉しいです。 彼らの口から今回の件についての思いを聞くことができ、魂となったエメロード姫からも感謝の意を伝えられたことで3人も心の整理がついたようです。

『ありがとう、マジックナイト…』。最後に彼女はそう告げた。

ピータン

心の整理がついたことでハッピーエンド風になったわけだ。 それはおそらくプレイヤーとしても同じで、原作漫画で受けたやりきれない思いが少しでも救われたことだろう。

更科みどりこ

もちろんこの結末だと第2部に繋がらなくなるから、あくまでパラレル展開なんだけどね。 『レイアース』は原作漫画、TVアニメ、OVA、セガサターン版と全部物語が違うからこういうのもありだと思うわ。 何より私が見たかった結末だしね!(^^)

肴倉もろみ

レイアースの物語が第1部で完結するとするなら、本作は見事に原作足りうると思います。 感情渦巻く最終決戦からエンディングまでの流れ、ファンの皆さんはぜひ体験してみてください(^^)

初稿:2019年5月19日

最終更新:----年--月--日

← 前の記事へ | 一覧へ | 次の記事へ →

PAGE TOP