1987年10の月、ファミコンよりも高性能なゲーム機の実現を目指したハドソンとNECホームエレクトロニクスのタッグが世に送り出した新ハード『PCエンジン』。 その対応ソフト1本目として製作されたのが、今回紹介する『THE 功夫』なわけだ。
あれ、これロンチだったっけ? 私の記憶だと、本体と同時発売なのは『ビックリマンワールド』と『上海』の2本だけだと思ったけど。
そのあたりは少し事情がありまして…。 『THE 功夫』はPCエンジンのローンチソフトとなるべく製作されていたのですが、マスターアップ直前にバグが見つかったために実際の発売は遅れてしまうことになりました。 なのでローンチでこそないのですが、パッケージにはしっかりとVol.1の刻印が打たれてありますよ。
燦然と輝く刻印。
そうなのね。 あんまり気にしたことなかったけど、あの番号って発売日順じゃなかったんだ。
そのせいか知らんが、現在の版権元であるコナミデジタルエンタテインメントのWebサイトの説明では 『PCエンジンと同時リリース』なんて平然と書いてあったりする。もちろん事実誤認だぞ!
コナミデジタルエンタテインメントのWebサイトより引用。
コナミはハドソンから権利を引き継いだだけだし、そのあたりの事情に詳しくないんでしょうね。 残念な話だけど(´Д`;)
ちなみにローンチとなった『上海』のナンバーは『Vol.4』なんです。 これは『THE 功夫』が遅れた代わりに発売を繰り上げたからなんですね。 ハード立ち上げ初期の混乱を象徴する出来事でした。
ローンチソフトの役割とは何か。 それはハードの性能や魅力を世間に向けてアピールすることだ。 すなわち、既に市場で大きなシェアを得ていたファミコンと比較して『こんなにすごいんだぞ!』と見せつけて認めさせねばならなかった。 というわけで、まずは画面を見てもらおう。
今までのゲームでは実現できない巨大なキャラクターが目を引いた。
いつ見てもでかい、キャラがでかいわあ!(゜□゜;)
ファミコンでは到底実現し得ない、巨大でリアルなキャラクターが自分で操作できるというのは衝撃的だったな。 これで一つ目の狙いは成功したと言えるだろう。PCエンジンというものに期待感を抱かせることができた。
しかしそれはあくまでも第一印象の話です。 ここからは、PCエンジンの広告塔として世に送り出された本作が実際にはどのようなものであったのか、内容について見ていきたいと思います。
このゲームの概要を簡単に説明すると、主人公の“王(ワン)”が邪悪な暗黒大帝に乗っ取られた 中国功夫最大の城“洛陽閣(ルーヤンカク)”の奪還に赴く…というストーリーの横スクロールアクションだ。
よくあるカンフーもののイメージね。
そのころ流行ってたわよね〜。
中国功夫の使い手である王さんの持ち技はパンチとキック。 内訳は立ちパンチ、しゃがみパンチ、立ちキック、垂直ジャンプキック、ジャンプキックの5つです。
他に2つの必殺技があるが、ボス戦専用だからあとで紹介することにしよう。
この王さんを操作して雑魚敵を蹴散らしながら右へ右へと進んでいき、奥で待ち受けるボスと戦う…というのが基本的な流れとなりまして、これが3×4=12ステージ続きます。
襲い来る雑魚敵とはこいつらのことだ。 画面外から飛んでくる鳥・石・岩・火の玉・扇など多種多様な飛び道具とフードを纏った戦闘員たちだぞ。
フード男。
鳥。
石。
岩。
火の玉。
改めて見てもバリエーションに乏しいわねえ(^^;) このフード男が唯一の人型をした雑魚敵って事実が悲しいわ。
その上このフード男は特に攻撃技を持っておらず、そのまま歩いて突っ込んでくるだけですからね(^^;)
これが唯一の人型とは言ったが、基本色である黒の他に緑と赤の色違いが存在する。 緑はこちらとぶつかりそうになると一瞬だけしゃがむフェイントをし、赤は黒と同じ動きだが耐久力が3倍という特徴がある。
しゃがみフェイントの緑フード男。
体力3倍の赤フード男。
日本には赤いやつは3倍にしないといけない決まりでもあるのかしら?(´д`;)
結局、攻撃技らしいものを一切持ってないのが寂しいですね…(^^;)
鳥や石などの飛び道具は撃墜するなりしゃがんでやり過ごすなりしよう。大岩だけは撃破不可だがな。 なお火の玉は蹴ると逆にダメージを受けそうなもんだが、問題なく蹴れるぞ。
なんだかなー、ちょっとわかりにくいわ(´д`;)
ここで注意するのは、地面スレスレで飛んでくる石や岩だな。
先ほど技の説明をしましたが、王さんは下段に当たる攻撃技を持っていないんです。 なのでどうやってもこれらを撃墜することはできず、ジャンプでかわす以外ありません。
それもなんだかなー(´д`;)
見た目はあんまり功夫っぽくないボス。
さて、ようやくボスにたどり着いたな。 ここからは少し功夫らしい戦いにいなるぞ。 リーチの読み合いで打撃を当てていくんだ。
パンチよりもキックの方がリーチが長いですよ。
もったいぶってたわけじゃないけど、そろそろ必殺技の紹介もしなきゃね。その名も…。
…なんつーネーミングなのかしら(^^;)
発動条件だが、デカパンチは2回、あたた拳は3回連続で攻撃を受けた後にパンチボタンだ!
名前はともかく威力は本物で、デカパンチは相手の体力を3ゲージ、あたた拳は1発あたり4ゲージを一撃で削ることができます。
発動条件がコマンドじゃないのがこの時代らしいわね。
本作では残り体力を次のステージに引き継ぐから、あんまり多用できるものではないけどな。
あくまで逆転の一手として使用するべき技ですね。 決まると気持ちいいのでつい狙いたくなっちゃうんですけど。
さて、こうして進めていくと…いや、とっくに勘づいてるかもしれんが、本作が容量不足に苦心しているのがわかるだろう。
まあね、人型の雑魚敵がフード男だけだったしねえ。 それも簡単なデザインだし絵のパターンも少ないし。 それに見て、下は1-1〜1-3までのボスの画像なんだけど。
兄弟などという設定ではないようです。
どうよこの使いまわしっぷり!いきなり3面連続で同じおっさんの相手をさせられるのよ!
後で出てくるボスキャラのうちの1人は主人公のグラフィックを使いまわしてるしなあ。 台所事情の苦しさがありありと見えるな(´д`;)
やっぱり兄弟などという設定ではないようです。
容量不足というより、巨大なキャラクターを滑らかに動かすために多くを注ぎ込んだ結果ですね。 そのおかげで初見のユーザーには多大なインパクトを与えましたが、他の表現にしわ寄せがいってしまいました。
まあ、そのインパクトを与えるのが目的のソフトだからな。 こういう技術力をアピールするために生まれたソフトというのは後世になってその技術が一般化あるいは陳腐化するとその価値を認められにくくなっていくもので、それは仕方のないことだ。
はかないものね…。
だが、本作は幸せだと思う。 既にPCエンジンの時代が終わりハードメーカーもソフトメーカーも消滅して久しいが、今でもプレイする手段が多く残されているんだからな。
バーチャルコンソール(WiiU、3DS)、ゲームアーカイブス(PS3)、PC Engine GameBox(iOS)、ひかりTVゲーム、G-clusterと、2018年現在でも実に様々なサービスの中で配信が行われています。 PCエンジンオリジナルのゲームがここまで展開されているというのは他に例がなく、なんだかんだで広く愛された証なのではないでしょうか。
あの頃、私たちがPCエンジンという新ハードに見た気概… PCエンジンが見せようとしてくれたゲームの未来を今の時代に感じてもらうのは難しいかもしれないけど、 当時の他のゲームと比べてみると存在感の違いは伝わると思うわ。 良くも悪くもPCエンジンの歴史を語る上では欠かせない作品よね。
初稿:2018年11月24日
最終更新:----年--月--日