眠り薬と赤い水

クイズ日本昔話 アテナのハテナ?ゲームボーイ|ゲームレビュー

パッケージ表

パッケージ裏

ROMカセット

タイトル画面

クイズゲームの流行

更科みどりこ

1990年代の初め頃だけど、クイズゲームが世間のブームになっていたことがあったのよ。

ピータン

そのブームの先駆けとなったのがカプコンの『アドベンチャークイズ カプコンワールド』だ。 それまでは単にクイズを出題するだけの無機質なゲームが多かったこのジャンルに世界観を与え、 また『すごろく形式のマップ』『ノルマ制』などの新機軸をを取り入れたこの作品は実に新鮮に感じられた。

肴倉もろみ

その人気は普段ゲームをやらない人達にまで拡大しました。ソフトメーカーから見ても、プログラム的に作りやすいわりに インカムが大きいクイズゲームは魅力的だったようで、この時期は主要なメーカーの大半から立て続けにリリースされていました。

ピータン

今回取り上げる『アテナのハテナ?』もそんな時期に発売された1作だ。ゲームボーイでのリリースだが、前述の『カプコンワールド』の影響を色濃く受けた作りになっているぞ。

ストーリー

◆ストーリー◆


ある日、サトルくんとミキちゃんがいつものように絵本を読んでいると、突然本から得体の知れない生き物が飛び出してきました。

サトル「わーっ!」
ペロン「とつぜんゴメンね!ぼくの名前はペロン、絵本に宿る妖精さ!
・・・・・・だけど、こうしてキミたちの前にあらわれたのは、頼みごとがあるからなんだ。
じつは、この本はいま、悪い悪魔によって秩序が失われているんだ。昔話の主人公たちが、悪にそまって悪いコトばかりしているんだよ!!ボクは、なんとか彼らを元に戻したいんだ!」

サトル「そんなコトを言われても・・・・・・」
ペロン「だいじょうぶ!本の世界に通じる穴はボクが作るから、そこへ飛び込んでくれ!」
サトル・ミキ「ええっ!!そんなあ!!」
ペロン「本の世界は、いま悪い妖怪でいっぱいだから、気をつけてねェー!」
サトル・ミキ「うわーっ!たすけてーっ!」

ペロンに言われるまま、ついに絵本の中に入ってしまったふたり。はたして、サトルくんとミキちゃんは絵本を
元の楽しい世界にすることができるのでしょうか!?小さなふたりの冒険の、はじまりはじまり・・・・・・。

(取扱説明書より)

和風のクイズゲーム

すごろく風のマップを進んでいく。

更科みどりこ

泡を吹かされるように2人が連れて来られたここは『花さか爺さん』の世界なんだって。

肴倉もろみ

システムは基本的に『カプコンワールド』のものを踏襲しています。 サイコロを振り、出た数字の数だけすごろく型のマップを進み、停まったマスに応じたイベントが発生するという仕組みですね。

ピータン

このゲームの場合はサイコロを振るんじゃなくて地蔵の笠をめくるんだけどな。なんだか罰が当たりそうだが・・・。

笠地蔵の世界をモチーフにしている。

肴倉もろみ

妖怪とクイズで戦うノーマルマス、地蔵とジャンケンして勝つとアイテムがもらえるマス、 3つのつづらから1つだけ開けるつづらのマス、クイズに正解するとすずめのおやどで体力を全回復できるマス、 これらを掻い潜ってステージのボスを目指しましょう。

強力な日本妖怪たちが行く手を阻む。

更科みどりこ

クイズはノルマ制で、規定の正解数に達するまで問題が出されるわ。 間違えると体力が減っていって、HPがなくなるとゲームオーバーよ。 設問も幅広く、芸能、理科、漫画アニメ、車などのジャンルから幅広く約2,100もの問題が用意されているわ。

肴倉もろみ

全体的にマニアックになりすぎておらず、一般常識を問うような問題が多いので敷居は低めといえますね。 ただし車に関する問題だけは製作者の趣味が反映されたのか難度は高めで、このゲームのターゲットであろう低年齢層には 難しいものになってしまっているのですが・・・(^^;)

ピータン

当時はF1レースが流行ってたからな。世相を反映したんだろう。

ボスとの対決

『お前もカレキのようになるがいい!』

ピータン

さて、各ステージの最後ではアクマに心を奪われてしまった昔話の主役たちと対峙することになる。・・・しっかし、悪い顔してるよなー(´д`;) この悪魔化した彼らの姿は見所かも知れん。

更科みどりこ

彼らは雑魚妖怪よりもノルマが高く勝つのが大変なの。 直前のすずめのお宿でしっかり体力を回復しておきたいわね。

すっかり毒気が抜けた花咲かじいさん。

肴倉もろみ

クイズに勝利すると彼らは正気に戻り、次に行くべき道を指し示してくれます。 こうして絵本の世界を元通りにしていくんですね。

更科みどりこ

身近な題材を使ったりクイズの難度を低めに設定したり、子供向けにしようという意図が見えるわね。 このゲームを子供のときにプレイして、いまだに内容を覚えてるっていう話もよく聞くし。 じゃあそういうわけで今回はここまで。またね〜。ノシ

語り継がれるトラウマ

肴倉もろみ

ちょっと待ってください!なになんとなくいい形で締めようとしてるんですか! このゲームが人々の記憶に残るのはそんな理由じゃないでしょう!?(゜□゜メ)

ピータン

このゲームを語る上では終盤の圧倒的な展開は外せないぞ! 多くの子供達に悲壮なトラウマを植え付けたあの結末をお前は忘れてしまったのか!?

更科みどりこ

いや、だから忘れたいんだってば・・・(´Д`;)
あーもう、わかった、わかったわよ!

悪魔の力で竜変化している竜の子太郎を正気に戻すと・・・。

肴倉もろみ

さて、花咲かじいさんに続き浦島太郎、かぐや姫、 桃太郎、金太郎、竜の子太郎らを正気に戻すと、 2人は突如不思議な穴に吸い込まれてしまいます。

絵本の世界とは違う、異質な冷たい機械の感触。

ピータン

気づくと、そこは今までいた世界とは明らかに違う、 機械仕掛けの無機質な空間だった。一体ここはどこなのか? 一体何が起こったのか?疑問に答えてくれる者は一番奥の部屋で待っていた。

どうして、ペロンが…?

更科みどりこ

そこにいたのは、なんとあのペロンだったの! こちらは状況に混乱するばかりだけど、ペロンは構わず襲い掛かってくるわ! その目はつり上がり口は裂け、まるで悪魔化してしまったみたい・・・!

ペロンが醜悪な化け物に!?

ピータン

なんとかペロンに勝利することができると、ペロンは思いもかけぬ真実を明らかにする。 悪魔の正体はペロン自身であったということ、ペロンは実は宇宙人であり、彼らの星は文明が発達して自らの体を全て機械化していること・・・。

更科みどりこ

そして生身の体が恋しくなったペロンは地球で子供たちを攫って脳を分離し、体を奪うことにしたこと、 絵本の世界は子供たちを誘い込むためにペロンが作り出した偽りの世界だったということを・・・。なんてことなの・・・(゜Д゜;)

敗北し、機械の体から煙を噴き上げるペロン。

肴倉もろみ

この後、2人は無事にもとの世界に帰ることができ、そこでエンディングを迎えることになるのですが、 プレイヤーにとってはそんなことはどうでもよくなるくらいの虚脱感が残ります(´Д`;)

更科みどりこ

あまりの予想外な展開に頭がついていかないこともそうだけど、 あの可愛いかったペロンが醜い姿になることや、挙句に皮が剥げて中身の機械が剥き出しになったり、 誘拐して脳と体を分離するなんて生々しくてエグい表現を使ったり、純な気持ちでプレイしていると 心に傷を負うことは間違いないわよ!((((゜Д゜;))))

ピータン

この脚本のうまいところは、主人公の2人とプレイヤーの境遇をうまく重ねたことだ。 彼らは絵本の世界という子供が気に入りそうなエサを撒かれ、誘い込まれた。 一方プレイヤーはパッケージなどの印象から、このゲームを子供向けのほのぼのとしたゲームだと思い手に取ったことだろう。

更科みどりこ

どちらも油断していたはずよね。このあたりのシンクロ感が感情移入しやすくさせているけど…そのおかげでトラウマも倍増したわ(´Д`;)

肴倉もろみ

でも、ペロンがあんなことになるなんて誰も思わなかったはずですよ!だってペロンはアテナのイメージキャラクターなんですから!

プレイステーション『デザエモンKids!』でゲームの作り方をレクチャーしてくれるペロン。
プレイヤーはいつか裏切るのではないかとヒヤヒヤしたという。

更科みどりこ

アテナはイメージキャラクターをこんな風に扱うことに抵抗はなかったのかしら? かえってイメージが低下してしまいそうなものだけど・・・。

ピータン

知恵の女神の名を社名に冠するアテナ。 しかしその正体は子供たちの心を惑わす悪魔だったのかもしれないな・・・。

初稿:2019年1月12日

最終更新:----年--月--日

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