パッケージ表
パッケージ裏
ROMカセット
タイトル画面
映画パンフレットより抜粋。大自然の中で描かれる父子の絆のドラマ。
フジテレビが20億円もの巨費を投じて製作し、1990年夏に全国上映された映画『タスマニア物語』。 キャスト及び製作陣に実績のある面々を揃え、第8回ゴールデングロス賞優秀銀賞を受賞や同年の邦画配給収入2位を記録するなどの実績を残している。
内容はオーストラリアのタスマニアを舞台として母親を亡くした少年が離れ離れになっていた父親との絆を取り戻していくヒューマンドラマとなっています。 実力派俳優による名演技、大自然の壮大なロケーションが話題となりました。
主人公は小学6年生の正一くんよ。 お父さんはシドニーの商社で働くエリートサラリーマンで、3年前までは家族で一緒にメルボルンで暮らしていたけれど両親が離婚して正一くんとお母さんは日本に戻っていたの。
その後病気でお母さんが亡くなってしまったことをきっかけに正一くんは再びお父さんに会おうと単身訪ねていくのですが、お父さんは半年も前に会社を辞めていて今はタスマニアで暮らしていることを知ります。
タスマニアでは大量の木材が日本に輸出されており、自然破壊が深刻な問題となっていた。 正一少年の父は自然保護活動に目覚めており、絶滅したと言われるタスマニアタイガーを探し出すことに躍起になっていたんだ。
正一くんはお父さんが家族のことを見捨てて幻の動物に心を奪われていることに反発するんだけど、一緒に自然の中で暮らすうちに段々と歩み寄りを見せていくわ。 結末までは言わないけれど、父子が共に精神的に成長する物語だったわね。
この映画は1990年7月21日に封切りされたが、その一週間後の7月28日にゲームボーイ用ソフトがリリースとなった。 これはプロモーションの一環であり、映画のワンシーンを切り取ったパッケージとすることで映画の宣伝を兼ねた格好だ。
お店の店頭でパッケージが並んでいると目につきやすいですからね。 タイミングも効果的で上手な宣伝手法だったと思います。
幻の動物タスマニアタイガー。
電源を入れると解説のナレーションと共に悠然と走るタスマニアタイガーの映像が流れる。 このアニメーションはなかなかクオリティが高いぞ。ぜひ実物と見比べてみてほしい。
映画パンフレットより抜粋。タスマニアタイガーの写真。
タスマニアタイガーはオーストラリアのタスマニア島にかつて実際に棲息し、1936年に絶滅したとされる哺乳類の動物です。 背中にトラを思わせる縞模様があることから名づけられたようですね。
ゲームの目的は映画でもそうだったようにタスマニアタイガーを見つけ出すことよ。 スタート前の選択項目にスローとファストがあるけれど、これは敵キャラクターのスピードを表しているわ。 ひとまずは無難にスローを選んでおくことにするわね。
難易度の異なる2つのモード。
本作は固定画面アクションの体裁を取っており、 タスマニアデビルの追撃をかわして画面内に植生している植物を全て取るとステージクリアです。 正一くんはジャンプができないので、高い段差に飛び移るときはトランポリンを使いましょう。
トランポリンを駆使して植物を集めよう。
そうそう、タスマニアデビルから逃げながら植物を集めるのよねー。
タスマニアデビルは上の段からのジャンプアタックで踏みつけるか爆弾で気絶させられる。 爆弾は同時に1つしか置けずタスマニアデビルが触れるまで発動しないため、いつどこに置くかの判断が大事となるな。
タスマニアデビルは爆弾で気絶させよう。
うんうん、爆弾をねー、タスマニアデビルにねー。
みどりちゃんが先ほどから気のない相槌を打っていますが、 なぜタスマニアタイガーに追われているのか、なぜ植物を消す必要があるのか、 なぜ小学生が爆弾を携行しているのかについての説明は一切合切ありませんのでこういうものだと受け入れてください。
いや、とても気になるんだけど…！ そもそも原作はそんな物騒なことをする映画じゃないのよ？ 当時からそのあたりが解せなくて、ずっと心に引っかかっているんだから。
実は本作、MSXでポニーキャニオンがリリースした『フルーツパニック』のアレンジ移植なんだ。 こちらは世界観がオリジナルだったり回収するものがフルーツだったりの違いはあるが、概ね内容は変わらない。
MSX『フルーツパニック』より。そっくり。
映画の裏話として、『タスマニア物語』の配給を行った東宝はもともと角川映画『天と地と』を上映する予定だったのですが 配給歩率を巡る交渉上のトラブルで配給元が東映に変更となったために代替として急遽撮られたそうです。 舞台が南半球のオーストラリアなのも冬の時期に晴れ間を撮れるという理由で決まったようですね。
映画が急ごしらえだからゲームも急ごしらえってわけね…。 時間がなかったんだろうから既存の自社作品を流用して開発リソースを削減するのは仕方がないと思うところはあるけど、 それにしても設定面でかけ離れすぎて映画のファンはさぞ困惑したでしょうね（＾＾;）
映画ファンの求めるものとは違っただろうな。 そうした意味では罪作りな作品だ。しかし元のゲームは一定の好評を得た実績があり、流用だからと言って決して侮れる出来ではない。 少々脱線したが改めて本作の紹介を進めていこう。
先ほど植物を全て取るとステージクリアになると言ったのですが、実はそれだけではエンディングに到達できません。 真にクリアするためには各ステージに1対ずつ隠れている『スペシャルアニマル』を全種類保護する必要があるんです。
スペシャルアニマルは全部で5種類いて、ステージごとに登場する種類は決まっているわ。 それぞれ出現条件が違うからここに載せておくわね。
このリストから分かる通り、スペシャルアニマルを出現させるにはジャンプアタック、つまり踏みつけて気絶させなければならない。 さらに後半ステージになるにつれてその必要回数が増えていくというわけだ。
ジャンプアタックを成功させるにはタスマニアデビルの動きをいかにコントロールするかが重要です。 タスマニアデビルはランダムに動くのではなく、正一くんのいる高さに合わせて移動してから向かってくる習性があるのでおびき寄せてから踏みつけるといいでしょう。
左右同時に向かってこられるとこちらとしても成す術がないから、できるだけ動きが重なるように誘導することも大事ね。 複数まとめて踏みつけることができたら俄然有利になるわ。
プレイしているとジャンプアタックしやすいステージとそうでないステージがあることに気づくだろう。 2ステージのうちに1匹保護できればいいので、どちら側のステージで保護するのかあらかじめ決めておくといい。
SLOWモードの方はタスマニアデビルの速度が遅いから慣れればクリアはできるくらいの難易度だけど、反面FASTモードの方は相当にシビアよ（＾＾;）
FASTモードではタスマニアデビルの速度が正一君と同じになるので、振り切ることができないんですよね。 このステージの狭さでかつ後半には袋小路があるステージもあるため、理不尽とも思えるほどの難しさになっています（＾＾;）
圧倒的な速度が生む無慈悲なまでの制圧力。
もしかすると急ごしらえだったために難易度調整が間に合わなかったのかもしれないな。 無理してプレイせずともよいが、FASTモードのエンディングはSLOWモードとはまた違う内容となっているため挑戦してみる価値はあるだろう。
やや調整の甘さは見られるものの、1画面に集約された密度の高い鬼ごっこは緊張感がありクリアするとしっかり達成感を得られます。 ドットイートゲームが好きなら楽しめると思いますよ。
映画と同じようにという風にはいかないでしょうけど、厳しい難易度を乗り越えられたならエンディングを迎えた時に感動できるかもね。
タイアップ先である映画作品との乖離に戸惑うが、光るところはある。 映画とは別物と割り切って楽しんでも良いしあえて関連性を見出して楽しむのもまた良いだろう。
初稿：2025年06月12日
