共和国軍に蹂躙されるカントリー村。
のどかで平和なカントリー村の生活は突如として一変する。 隣国アクダ共和国の侵略攻撃を受け村は瞬く間に占領されてしまったのだ。
圧倒的な軍事力による制圧。 しかしこの絶望的な状況可にあって村人たちは屈しませんでした。 共和国軍の隙を付いて一台のタンクの鹵獲に成功します。
意気上がる村人たちはアクダ共和国の首都を目指して反攻を開始するわ。 たった1台のタンクで大軍を相手にするのは無謀にも思えるけれど、義憤に駆られた村人たちは止まらないわね。
こちらから逆に攻め込んで共和国の総統に目に物見せてやりましょう! …と言いたいところなんだけど、このタンクは重大な故障を抱えていたの。 こんなことで本当に大軍と渡り合えるのかしら…?
『突撃!ポンコツタンク』はHAL研究所が製作しゲームボーイ向けにリリースした任意スクロール式のシューティングゲームだ。 1台のタンクを操作して侵略国家アクダ共和国の打倒に挑もう。
タンクと言うと頑丈な装甲と強力な砲塔による破壊力を誇る反面、重量が重く足回りが遅いというイメージが一般的かと思います。 しかしこのタンクの動作は非常に軽快。それでいて火力も高く、1台で大軍を相手するのに不足のないポテンシャルを持っています。
なんたって、敵兵器も建物も構わずに画面上のほとんどのオブジェクトを砲撃ひとつで破壊できちゃうのよ。 どんどん壊して突き進む、この爽快感がたまらないわ。ボタン押しっぱなしで自動連射してくれるしね(^^)
Aボタンで砲塔を回転し、Bボタンで砲撃。
敵の輸送車を破壊すると出現するアイテムを拾えば更に攻撃性能が上がるわ。 輸送車はパワーアップアイテムの他にも回復や1UPのアイテムも落とすから、できるだけ撃ち漏らしのないようにしたいわね。
輸送車は逃さずに。
このように堅くて速くて強いタンクだが、先程も触れたとおり故障中であり一部機能が働いていない。 通常のタンクは砲塔を回転させて砲撃する方向を制御できるのだが、この砲塔に欠陥があるのだ。
砲塔の旋回機能が壊れていて右回りしかできないの。 砲塔の左旋回ができなくて、これがポンコツタンクと呼ばれてしまう所以なのよ。
砲塔は右にしか回らない。
この欠陥の影響で、向かって左側にいる敵と戦うのに不利になるわ。 むやみに突っ込んだりしないで死角をカバーする立ち回りを意識する必要があるわね。
砲塔を回転させる時間よりタンク自身を動かして軸を合わせる方が速いこともあります。 その状況に応じた判断をしていきましょう。
本作のゲームモードは1人用の『メインゲーム』と複数人で遊ぶ『マルチゲーム』がある。 というわけでまずはメインゲームを紹介し、その後にマルチゲームを紹介する形式としよう。
メインモードは目的地であるアクダ共和国の首都を目指して敵や障害物を破壊しながら進んでいく全4ステージで構成されたゲームモードよ。 各ステージの中盤と最後にはボスが配置されているわ。
ではステージごとの特徴を見ていきましょう。
ステージ1の舞台はカントリー村よ。 村はすっかり占領されてしまっていて、のどかで平和だったという風景は今や過去のものだわ。
さらにポンコツタンクの反乱によって村は激戦区と化しました。 建物も普通の民家のように見えますが、その陰にはたくさんの兵器が隠れています。
地の利を使われてるなら建物ごと破壊し尽くす他ないわね。 悲しいけれど平和を取り戻すためには必要な犠牲なのよ。
仕方のないこととは言え、仮にも自分の故郷を壊すというのに躊躇いのひとつもないのか(´Д`;)
最初の中ボス、戦闘ヘリ。
本作は全4ステージで、各ステージの中間地点と最後にボスとの戦いが待っています。 最初の中ボスは戦闘ヘリですね。ローターを飛ばして攻撃してきます。
ローターは大きくて避けるのが難しいけれど、ローターを外してる間の本体は身動きが取れないわけだからこちらの攻撃チャンスでもあるわ。 隙を見付けて狙い撃ちましょう。
波動弾を放つドラゴン戦車。
ステージボスはドラゴン戦車だ。 首を伸ばしてのアタックに両手から繰り出すパンチ、そして3WAYの波動弾と多彩な武器を持っている。 しかし軌道自体は単調だからよく見ていけば対処できるだろう。
敵基地を破壊せよ。
ステージ2の序盤は敵の前線基地兼研究所です。 基地だけあって戦車やロボットが多く配置されていますね。
迎え撃つのはオリジナルタンク。
中ボスはポンコツタンクと同型の戦車だ。 量産型だから敵側にも同じものがあるんだな。 しかし故障はしておらず、砲塔を自由に回して砲撃してくる。 不利な位置取りにならないよう気をつけよう。
劣勢になると巨大化する機能まで備えている。
やっつけた…と思ったら今度は巨大化するわ。こっちにはそんな機能はないのにずるいわね。 驚いたけど大きくなったことで攻撃が当たりやすいし、足回りも遅くなっているから後ろに回り込んで攻撃すればなんてことないわね。 ちょっと見掛け倒しだったわ。
砂漠に延びるハイウェイを越えよ。
ステージ後半は広大な砂漠地帯よ。 屋外に出たことで敵の兵器も巨大なものが増えてきたわ。 大型トレーラーや戦闘ヘリが大量に押し寄せてくるわよ。
転ぶテツジン。
ステージボスはこの巨大ロボット、その名も『多用途型機動歩兵テツジン』よ。 こちらの位置を見定めて体当たりで突っ込んでくるわ!
だが開発途中という設定のせいかバランスが悪く、突っ込むたびに転倒してしまうようだ(´Д`;) 避けて転んだ隙を攻めてしまえ。
鳥も通わぬ山岳地帯。
第3ステージはホエホエ山脈よ。 狭くて険しい山道をたくさんのアクダ軍が待ち伏せしているわ。 途中からは洞窟を通っていくわよ。
砲撃と体当たりが脅威。
中ボスは黒い球体です。 8方向に砲撃してくるので近づいては危険です。 時々コアが出現するのでこれが弱点のように思ってしまいそうですが、実際はどこに当てても大丈夫ですよ。
8方向から飛び出す頭を狙え。
さらに狭隘な谷と洞窟を抜け、現れたステージボスは『道化師型多重砲塔ジョーカーヘッド』だ。 頭が弱点だが、色んな場所から出たり引っ込んだりするから狙いを定めにくい。 どこから現れても対応できるように真ん中あたりに陣取っておくといいだろう。
整備された都市を進め。
敵の本拠地、首都のグーデルバーグです。 都市部では戦闘バイクや中型戦車との戦いがメインになりますね。 切れ目なく現れる敵の物量に本気を感じます。
地上兵器は空爆に抗えない。
中ボスは空から爆撃を行う飛空戦よ。 空中にはこちらの攻撃は届かないから、とにかく逃げ回りましょう。 時間が経てば勝手に墜落してくれるわ。もしかして燃料切れだったのかしらね。
アクダ共和国の親玉。
再登場したこれまでのボスたちを今一度蹴散らしたら、いよいよ最後のボスのお出ましだわ。 『共和国総統閣下専用機動戦車マキシマムダディー』よ!このゲームのボスキャラはどいつもこいつも名前が長すぎね。
最後の戦いというだけあって一筋縄ではいきません。 この敵は一定のダメージを与えるごとに逃げて、その度に攻撃方法が変化します。 特に両手に戦車を抱えて放つ特殊砲弾は脅威ですね。
ひっきりなしに特殊砲弾を撃ち込んでくる。
武器がハンマーに切り替わったら本当の最終段階だ。 振り子のように左右に避けながら、思いのたけ砲弾を食らわせてやろう。
勝利はすぐそこだ。
それじゃあ次はマルチゲームの紹介よ。 このモードは4体のタンクが撃ち合って生き残りを競うサバイバルゲームとなっているわ。
4人用アダプタに対応した数少ないゲームのうちのひとつなのよね。 まあ4人でプレイしようとしたらアダプタの他にもゲームボーイ本体とソフトが4つずつ、さらに通信ケーブルが3本必要になるから実現のハードルは高いんだけど。
4人用アダプタ。
もちろん、人数が足りない場合はCPUが補ってくれるから1人からでも遊べますよ。
本モードではアイテムは出現せず、単純に撃ち合いの勝負となる。 シンプルだが4体のタンクによる乱戦という形式が面白さを引き上げているんだ。
生き残りをかけた戦い。
人によって作戦や思惑があって、それが全体の戦況に作用するからね。 優勢な人がいたら加勢してみたり、隙をついて背後から襲ってみたり、なるべく乱戦に巻き込まれないように逃げてみたりとか、みんな色々な考えで動くんだもの。
いろんな考えの人が交ざることでいつも同じ状況になることはないから、 タンクの性能が同じでも同じ人がいつも勝てるとは限らない偶然性があるわね。
それでもどうしても実力差が生まれてしまうようなら、それを埋めるためのハンデ機能も付いています。 おもりを2段階つけることができ、大きい重りをつけるほどタンクの動きが遅くなるので試してみてください。
重りを付けるとスピードが下がる。
戦闘が終わると成績発表に移るわ。 レートは1位が4点、2位が3点、3位が2点、4位が1点が基本点で、それに加えて破壊した戦車の数1台につき1点ずつ加算される仕組みよ。
結果発表。
破壊した数がそのままポイントになるから、逃げてばかりの消極的なプレイじゃ滅多に1位は取れないのよね。 システムが積極的に乱戦に参加することを推奨していて、結果的に白熱しやすい状況を生むってわけ。 上手いバランスだわ。
短い時間で決着が付くことも手伝って、何度でも繰り返して遊びたくなる秀逸なパーティゲームと言える。 だがこの面白さは3人、4人でプレイしてこそ真価を発揮するものだから遊ぶハードルが高いのが惜しまれる。 もし機会があるならぜひ試してみてほしい。
以上、長くなりましたが『突撃!ポンコツタンク』の紹介でした(^^) 破壊活動が楽しいゲームでしたね。
爆発のエフェクトが効果的で爽快感あるんだよな。 操作性も軽快だし、どう立ち回るかを考える余地もあってつい夢中になってしまうんだ。
砲塔が片方にしか回らないことがいいアクセントになっているわよね。 この不便さがなかったら戦略性のない単調なゲームになっていたと思うもの。
この仕様はボタンの数の制限から生まれているのよね。 ゲームボーイのボタンは少ないから、砲塔の旋回方向を制御するためのボタンが足りなかったのよ。
Aボタンは砲撃に当てているからな。 Bボタンだけで旋回方向を制御するのは不可能だから、あえて右方向だけに回転するよう割り切ったということだ。
ボタンが足りないことを逆手にとってポンコツ扱いにするなんて、巧い発想の転換だと思うわ。
ところでこれは余談だが、本作の砲塔が右にしか回らない仕様を見て思い出したことがあるんだ。 かつて1973年代に任天堂が発売したカーラジコン、『レフティRX』をな。
へえ、任天堂って昔は色々なおもちゃを作っていたけど、カーラジコンにまで手を出していたのね。 だけど本作とカーラジコンがどう関係してくるのかしら?
当時のラジコンは非常にお金のかかる高級な趣味で、多くの子供たちは憧れながらも手に取ることができないでいたわ。 そこに破格の値段で現れたのがレフティRXだったのよ。
先にもう少しラジコンの説明をさせてくれ。 ラジコンは操縦機から発する無線電波で模型を自由に動かすのだが、電波のやりとりには送信機と受信機が必要となる。 この組み合わせをチャンネルと呼ぶが、例えばラジコンカーであれば方向を調整するチャンネルと動力を調整するチャンネルの2つが最低でも必要となってくる。
細かい動作をさせようとすればするほどチャンネルの数が増えていくんですね。
このチャンネルの価格が高かった。 だから精巧な動きができるほど価格が跳ね上がり、ラジコンは当時でもサラリーマンの平均月収と同じくらいか上回るほどの高価な代物だったんだ。
そんなに!ラジコンが大人の趣味って言われるわけだわ(^^;)
そこで任天堂は意外な製品を生み出すわ。 なんと1チャンネルのカーラジコンを作ってしまったのよ。 このことでレフティRXは当時の平均的なラジコンの10分の1ほどの価格を実現しているわ。
1チャンネル!?Σ(゜Д゜;)
さっき、カーラジコンは最低でも2チャンネル使うって聞いたばっかりよ。
たった1チャンネルでどんなラジコンができるっていうの?
直進のためにチャンネルを使っている。 だが車体にスプリングが組み込まれており、ステアリング操作ができない代わりにスプリングの力で車体が左に曲がるように工夫されているんだ。
直進スイッチを押している間は真っ直ぐ走って、手を離すと減速しながら左に曲がるの。 単純な構造だけど左回りのコースを用意すればレースもできるし、不便さはあれど当時のラジコンブームの中では手の届きやすい価格にしたことが何より重要だったわ。
高価なカーラジコンを玩具として提供することができたため、結果的にレフティRXはヒット商品となりラジコンの低年齢層への普及に貢献したんだ。
左にしか曲がれないレフティRXと砲塔が右にしか回らないポンコツタンク、確かに通ずるところがありますね。
どちらも使いたいものが満足に使えない制限の中で生まれたアイディアということが共通してるのね。 ウィークポイントをセールスポイントに変える工夫が素晴らしいわ。
問題点があればそこを回避する方向で解決策を探ることは少なくないが、そうではなく問題点の本質に向き合い問題点ではなく魅力に変えた。 このようなアイディアを出すには高い洞察力が求められるが、実践できれば他にない無二の商品力となる。そんなことを教えてくれた作品たちだ。
初稿:2007年03月29日
改訂1:2020年11月5日
改訂2:2025年09月21日