眠り薬と赤い水

水晶の龍 ファミリーコンピュータ ディスクシステム|ゲームレビュー

パッケージ表

パッケージ裏

ディスクカード

タイトル画面

DOGの野望

ピータン

1986年当時、マイコン(パソコン)で名作RPG・AVGを多数輩出していたソフトハウス7社が集ってファミコンに参入するという電撃的なニュースが流れた。

肴倉もろみ

各社は協力体制を敷き、既にファミコンへ参入していた幹事企業のスクウェアが窓口となって機材やノウハウを共有することで開発の効率化を図ろうと新たなブランドを 立ち上げました。
それがDOG(DISK ORIGINAL GROUP)です!

ピータン

DOG参入各社の代表作をいくつかまとめてみたぞ。

更科みどりこ

本当に有名な作品ばかりよね。 実際のところほとんど遊んだことはないんだけど、ファミコンに慣れてきてパソコンのゲームにも興味が出てきた頃によく目にしたタイトルばっかりだわ。
パソコンは高くて買えないから憧れの的だったのよ!

肴倉もろみ

そう、パソコンゲームで名を馳せたソフトハウスが一挙にファミコンへと参入してきたんですからね。
それは期待感も高まるわけです!

ピータン

今回取り上げるのは、筆頭格のスクウェアがDOG第1弾として送り出したタイトルだ。

水晶の龍

左からパッケージ、マニュアル、ディスクカード。

肴倉もろみ

こちらがそのアドベンチャーゲーム『水晶の龍』です。 DOGのゲームはこのパッケージの大きさも特徴的でした。 中にはディスクカードとブックタイプのマニュアルが入っています。

更科みどりこ

そういうとこもパソコンゲームっぽいわね。 大きいマニュアルってなんか好きだわー。

ピータン

このマニュアルは圧巻のフルカラー50ページ! 操作方法の他、美術を担当した佐藤元さんによる23ページに渡るプレストーリー漫画が掲載されていてそれだけでも読みごたえがある。

肴倉もろみ

佐藤元さんはアニメーター出身の漫画家として知られており、ディフォルメの効いた作風が特徴的で人気がありました。 ビジュアルに力を入れていたスクウェアらしい起用です。

プレストーリー

未来的な都市計画に基づいて造られた街並み。

ピータン

惑星ごとに国が独立しており、大型シャトルでの交流が盛んに行われている世界。特に明言はないが、進んだ文明からここは我々がいるより未来の時代のようだと見て取れる。

肴倉もろみ

ではプレストーリーに登場するキーパーソンについてご紹介しましょう。

更科みどりこ

水晶の龍事件…気になるワードが飛び出したわね。

肴倉もろみ

ですが、どんな事件なのかここでは明かされないんです。 話は飛んで日曜日、スペースランドに遊びに行くためにシャトルで宇宙に飛び出した3人が見たものは…。

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宇宙空間に突然現れた巨大なドラゴン。

ピータン

出たぞ!こいつが水晶の龍だ! 3人は襲撃され、ヒューは意識を失ってしまう…。

前半のストーリー

水晶の龍に襲われた3人の運命は。

更科みどりこ

ここからはゲーム本編にバトンタッチ。 いきなりこの襲われる画面から始まるから、プレストーリーを読んでないと面食らうかもね(´Д`;)

謎の女性ユージン。

肴倉もろみ

ヒューは見知らぬ船に救助されます。 助けてくれたこの女性の名はユージン、まるで水晶のような瞳の持ち主です。
パッケージにも大きく描かれていますね。

ピータン

今後も物語に関わってきそうだな。 星に戻ったヒューは広場のモニターでニュースを見る。

水晶の龍事件に関するニュースが流れる。

肴倉もろみ

これまでにも多くのシャトルが行方不明になっており、そのいずれも水晶の龍に遭遇した後に消息を断っているというのです。聞けばこの事件は今回が初めてではなく、60年前にも同じことがあったらしいのですが…。

おばばは何かを知っている。

更科みどりこ

おばばを訪ねると、宇宙に行くための新しいスクーターをくれるわ。

再臨。

肴倉もろみ

宇宙に行くと再び水晶の龍が現れます! …が、何もできずまたしても撃墜されてしまいました(^^;)

更科みどりこ

…何しに行ったのかしらね(´Д`;)

ピータン

なんなんだろうな…。 しかし前回はユージンが助けてくれたが、今回は誰も助けてはくれない。そのまま近くの星アリアスムーンの砂漠に不時着してしまうぞ。

打ち捨てられたシンシアのシャトル。しかし持ち主はいない。

肴倉もろみ

そこではシンシアが乗っていたシャトルを見つけますが、シンシアもナイルも姿はありませんでした。 このシャトルから部品をもらって自分のシャトルを修理し、再び自分の星に帰ります。

更科みどりこ

それだけで戻るなら、ますますこんな展開にした意味がわからないわ…(´Д`;)ただやられただけよね。

ピータン

星に戻るとエアポートにユージンの姿を見つける。 その様子を不審に思ったヒューは後を追うことにするぞ。

謎の巨大コンピューター。

肴倉もろみ

ユージンの家に隠されていた巨大なコンピューターを見つけ、通信メッセージを確認します。計画の邪魔をしているというのはおそらくヒューのことでしょう。

ピータン

実際のところ、2度撃墜されただけで何もわかってないのだがな…。

殺意を持って襲い来るユージン。

更科みどりこ

そこにユージンが現れ、超能力で襲ってくるわ! ここは選択を間違えるとゲームオーバーになっちゃうから気を付けてよね!

ピータン

ユージンを撃退したら、もう一度おばばの所に行こう。

ついに完成した新型スクーター。

肴倉もろみ

おばばはヒューにかねてより開発していた新型メカを託します。このスクーターはスコープ、シールド、ブラスター等の兵器を備え、小型ロボットへの変形もできるという高性能なメカなのです。
これに乗って水晶の龍と3度目の逢着といきましょう!

生物でないとしたら、一体何者が作ったのだろう。

ピータン

スコープを通してみた水晶の龍の正体、それは見たこともないメカだった。 龍の姿はホログラフだったんだ!

新型ブラスターの威力で跡形もなく消し飛んだ。

肴倉もろみ

謎のメカに照準を合わせ、レーザーを発射!みごと木っ端微塵に吹き飛びました。

ナイルとシンシアはどこに?

更科みどりこ

そこにナイルからの通信が入るわ。 彼らは他の人たちと一緒にピラミッドに閉じ込められているそうよ!助けてあげなくちゃね。

ピータン

シンシアたちを助けるヒューの冒険はまだ続くが、一旦このあたりでまとめてしまおう。

総評

ピータン

さて、お前らは最後までプレイしたことがあるよな?
このゲームについてどう思っただろうか。

更科みどりこ

うーん、ちょっと期待外れだったってのが正直なところね。 ほんとグラフィックはきれいだし、ファミコンでもここまでできるんだと思って楽しみにしてたんだけど…。

肴倉もろみ

元アニメーターである佐藤元さんが自らドット打ちを手掛け、ファミコンでは前例がない目パチや口パクのアニメーションを取り入れたグラフィックのクオリティには目を見張りましたね〜。 ですが、肝心のストーリーがあまり盛り上がらなかったんです。

更科みどりこ

色々な設定がでてきたけど説明不足でよくわかんないし、いくつか伏線っぽいのもあったけど、ほとんど放り出したまま終わっちゃったしね…。 個人的には鳴り物入りで登場した水晶の龍があんなにあっけなくやられてしまったのが納得いかないわあ(´Д`;)

ピータン

やはりそんな感想になってしまうのか。 シナリオを肉付けしないでそのまま出してしまったような薄さなんだよな。後半は急展開が続くし、プレイしていて理解が追い付かなかったもんだ。

更科みどりこ

やっぱり容量不足?(´Д`;) スクウェアはパソコンの時代からシナリオやビジュアル面の評価が高いソフトハウスだったから、その辺にあまり容量を割けないファミコンじゃあ当初その実力を発揮しきれなかったところがあったわね。

肴倉もろみ

そうですね。ディスクシステムは当時のROMカセットより容量があったとはいえ、ただでさえメモリを消費するアドベンチャーゲームでグラフィックに凝ってしまったらテキストにしわ寄せが行くのは必然ですし。

更科みどりこ

言い忘れたけど、BGMもオープニングとエンディング以外は全くの無音だったのよ!その分効果音が効いている場面もあるんだけど、やっぱり全体的に見たら臨場感が足りなかったわ。 盛り上がりに欠けた要因の一つね(´Д`;)

ピータン

SF色の強い設定周りは面白そうに感じられただけに惜しいな。 もし完成品から削られてしまった構想部分があるのなら見てみたいが…。

肴倉もろみ

スクウェアは水晶の龍以後も苦戦を続け、この1年後に会社の存続を賭けて発売したファイナルファンタジーの大ヒットを受けてからはRPG路線に舵を取り直すことになります。 その後企業の成長期にあって、ヒットしなかった作品のリメイクを作ることはできなかったのでしょうね。

更科みどりこ

パソコン時代か、これよりもっと後で進められた企画だったらどうなっていたかしら…。
そんな想像が膨らんでしまうわ、ね。

番外編1:ネタばれ広告事件

ピータン

『水晶の龍』は決して高い評価を得た作品ではなかったが、ファミコンユーザーにおける知名度は極めて高い。 その理由について2つほど取り上げてみよう。

肴倉もろみ

第1にネタばれ広告事件、ですね(^^;)

更科みどりこ

『水晶の龍』の広告展開にはかなり力が入っていたの。 TVCMを目にする機会も多かったと思うわ。
だけど…。

肴倉もろみ

以上、TVCMで流れる映像を切り抜いてみました。 一体これのどこに問題があるのかというと、一番下から2番目の↓コレなんです。

更科みどりこ

これ…、エンディングの、しかも一番最後に表示される画像なのよね…。

ピータン

普通CMでエンディングを流すか!? おかげで既視感に包まれて素直に感動できなかったぞ(´Д`;)

肴倉もろみ

しかもこのシーンはTVCMだけでなく雑誌などで展開された広告でも使われていたので、 このシーンを見た人の数はプレイ人口以上に多いという珍現象を生んでしまいました(^^;)

番外編2:ウソ技クイズ事件

ピータン

話題としてはこっちの方が有名だろう。第2に取り上げるのはウソ技事件だ。 当時のファミコン雑誌最大手だった徳間書店のファミマガ1987年2号に以下の記事が掲載されたんだ。

そこには、ヒロインのシンシアと野球拳ができるウル技(裏技)が掲載されていた。

肴倉もろみ

『超ウルトラ技+1』。 このコーナーではゲームソフトの裏技を紹介していました。 ここで紹介されている裏技の中には1つだけ再現できない裏技、 つまり『ウソ技』が隠されていて、それを暴いて応募すると 抽選でゲームソフトがもらえるという企画だったのですが…。

更科みどりこ

このコーナー、回によってはその凝りようが尋常じゃなくて、わざわざ実機を使ってプログラムを作ったり、 キャプチャ画像をCG処理して何時間もかけて ウソの画像を作っていたらしいわ。

ピータン

もう言わなくてもわかるだろうが、上の記事はそのウソ技だ。こんなイベントが任天堂のチェックを通過するわけはないよな。

更科みどりこ

だけど、疑うことを知らなかった思春期の少年達の間では一大センセーションとなってしまったわ。 結果として彼らの夢は儚く散っていくことになってしまうのだけど、このウソ技は現在においてなおウソ技の最高傑とまで言われ、 『水晶の龍といえば野球拳』という有難くない評判がついてしまったのよ(´Д`;)

肴倉もろみ

この事件の影響で、ゲームの内容は知らなくともこのウソ技だけは知っているという人のなんと多いことでしょうか(´Д`;)
なんとも罪作りな記事でした。

ピータン

開発側からすれば風評被害もいいところだが…。 結果して売り上げが一時的に伸びたようだし、この現象をどう受け止めていたんだろうな。

初稿:2019年6月29日

最終更新:----年--月--日

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