◆ストーリー◆
(取扱説明書より)
時は1986年5月。 エニックスより発売されたファミコンの『ドラゴンクエスト』、通称ドラクエは約80万本以上を売り上げる大ヒット作となった。 このことはパソコンゲーマーとソフトメーカーに大きな衝撃を与える。
それまでコンピュータRPGはパソコンゲーマーの特権でした。 ファミコンの性能ではRPGを製作するのは難しいという見方が強く、また、ファミコンのメインターゲットである子供達にはRPGは複雑で難しすぎると考えられていたのです。
現に、ドラクエより前にパソコンの名作RPGの移植として鳴り物入りで登場した『ハイドライド・スペシャル』は低調なセールスに終わっている。 完成度の誉れは高いのだが、ファミコンユーザーにはRPGを遊ぶ土壌が育っていなかったから面白さを理解する人が少なかったんだ。
だから、ドラクエはユーザーを教育するところから始めたんでしょ? 週刊少年ジャンプの紙面を使ってじっくりとRPGというものの良さを教え込んだのよね。
ゲームそのものも初心者が入りやすいように綿密な設計がなされていますね。 こうした製作者たちの工夫と努力が実を結び、ファミコンでもRPGを普及させることに成功します。
今回紹介するのは、ドラクエに影響を受けて製作されたもっとも初期のRPGだ。
◆ストーリー◆
遥か未来、地球からの宇宙移民先である惑星イーバルでの物語。 神バーンの力の源であるインドラの光が魔物に盗まれたために荒廃の危機に瀕し、勇者である主人公が奪還すべく旅立つ…という筋書きです。
SF的な設定だが、現在の惑星イーバルにはかつての文明を思わせるものはなく、科学技術も失われているようだ。 当時の多くのRPGのように中世ヨーロッパ風な世界観という印象を受ける。
んー?惑星移民時代を経て神への信仰があるのには少し違和感あるんだけど。
そのあたりも追々明らかになるかもな。 では物語を始めようじゃないか。
取説内とゲーム内との初動目的の乖離に戸惑う主人公。
王女の病?ドラゴンの牙?さっきの取説とストーリーが繋がってなくない?(´д`;)
うーん(^^;)まずは町中で情報を集めることにしましょう。
『ぶつ ぶつ ぶつ ………。』
なにコイツ…。ブツブツ言ってて気味悪いわあ(´д`;)
この人は術使いですね。 彼らは非常に豊富な知識を持っていて、重要な情報や魔法を教えてくれる味方なんですけど…。
今はまだ彼らの言語を習得してないから会話ができんな。 居場所は忘れないようにメモしておけよ。
最初の目的地へのヒント。
一通りの話を聞き終えたら、北の方角にあるという町『ゼラーナ』を目指しましょう。 本格的に外の世界への旅立ちです。
跳ね回るゴム風船?
荒廃してると言ってただけあって、砂地が多いわねえ…。 何か赤い変なのがウロウロ跳ね回ってるわあ! 怖っ!Σ(゜Д゜;)
それは敵のシンボルで、ぶつかると戦闘になりますよ。 この時代にシンボルエンカウントシステムを採用しているのは珍しいですね。
シンボルエンカウント方式だが、戦闘開始まではどのモンスターかわからない。
だからこのゲームはRPGなのにポーズ機能がついているんだ。 立ち止まっていても敵が襲ってくることがあるからな。
坊主?
…ってこれ、『ポーズ』じゃなくて『ぼおず』じゃない!! ダジャレだわあ!しょうもないわあ!Σ(゜Д゜)
時々、こんなふざけ…面白いメッセージが出ることがあるんです。 ちょっとしたお遊び要素ですね。
みょーなところで凝ってるわね(´Д`;)
さて、メニュー画面に他のRPGでは見慣れない妙なコマンドがあることには気がついたか?
コマンドリストをご覧ください。
『うごかす』ですね。 何のためのコマンドなのか、わかりますか?
ファレイの城の入り口を塞いでいる門番に試してみたけど、ちっとも動いてくれなかったわよ!
勇者に対して横柄な態度を取る兵士。
当たり前だ馬鹿者!Σ(´Д`;)
このコマンドで動かすのは、フィールド上にある岩のことだ!
岩を動かす。不自然な場所にポツンとある岩は怪しいぞ。
全ての岩が動かせるわけではありませんが、動く岩の下には地下への階段が隠されています。 その先には宝箱が置いてあったり、闇の商人が珍しい物を売っていたり、時には高等な術を教えてくれる術使いが蟄居していることもあります。 不自然な配置の岩を見つけたらとにかく動かしてみるべきですね。
隠されていた宝箱を発見!
しかし、主人公一人の力じゃ動かせない岩もあるんだな。 そこで、次の町『ゼラーナ』では仲間を探すことにしよう。 都合よく『サバ』という男が雇い主を探しているらしいぞ。
この岩を動かせる男が北の町にいるらしい。
噂に名高い戦士『サバ』。
さて、ゼラーナに着いたら先程から噂のサバを雇いましょう。 雇い賃は2,000Gと高額ですが、岩の下の宝箱をきちんと回収していれば問題なく支払えるはずですよ。
サバは傭兵だったのね〜。 やたらと力持ちをアピールしてるけど、本当に強いのかしらね。
なに、きっと噂に違わぬ活躍をしてくれるさ。 本作では敵キャラクターが同時に一匹しか出てこないから、こちらの人数が戦力に大きく影響するんだ。 序盤は辛かったレベル上げも捗るようになるぞ。 サバの力によってこれまで動かせなかった岩も動かせるようになり、探索の幅も広がることだろう。
いきなり置いてけぼりのサバ。
そりゃ頼もしいわね〜。 …あっ!? 仲間になったのにサバが付いて来てないわよ!!Σ(゜Д゜;)
いえいえ、ちゃんと付いて来てますよ。 サバは力持ちである代わりにスピードが遅いため、後ろをゆっくりと追いかけてくるんです(^^;)
フィールド上でもやっぱり遅れを取るサバ。
この追尾システムも本作の大きな特徴だな。 あまり先を急ぎすぎて仲間から離れすぎてしまうと、見失って置き去りにしてしまうから気をつけろよ。 このシステムでは仲間キャラによって歩く速度が違うため、個性付けにも一役買っているところだ。
厄介なのは、仲間と敵が接触しても戦闘になってしまうところですね。 主人公を半自動で追尾してくる仲間を誘導するのは難しく、敵が多いところや狭い通路ではなかなか苦労しますよ(´Д`;)
仲間が敵シンボルに触れると、主人公もエンカウント地点に飛ばされてしまう!
さらに面倒なことに、仲間が敵と接触した場合は主人公がどんなに先に進んでいてもエンカウント地点に飛ばされてしまう。 この現象は仲間うちで最も鈍足なサバにおいて特に発生しやすく、一瞬のうちに彼のもとに飛ばされてしまうためプレイヤーはこの現象を『サバジャンプ』と呼び、非常に恐れているんだ(´Д`;)
本当に鈍足だわ(´Д`;)
魚のサバは足がはやいのに…。
それ、『死ぬとすぐ腐る』って意味ですよ(^^;)
サバ死亡。
おい! くだらないこと言ってる間に本当に死んだぞ!?(´Д`;)
あら…サバがいなくなると敵を避けやすくなるから楽ねえ…。(わざと)
じゃなくて!生き返らせましょうよ!Σ(´Д`;) 早くしないと本当に腐っちゃいますよ!?
腐ることはないが、このゲームは仲間を生き返らせるのも簡単にはいかないんだよな…。 安易に死なせると後悔するぞ?
サバの墓。
あ、お墓が出来てるわね。サバ、安らかに眠るのよ…。
でーすーかーらー(−−;)
仲間が死んでしまうとその場にお墓が建ちますが、生き返らせるためにはまず町の礼拝堂へ行き、魂を呼び戻さなければなりません。
ただ話を聞くだけでもお金を取られてしまう礼拝堂。
ところがだ。魂を呼び戻しても返るべき肉体がここにはないため、復活することができない。 そこで、魂を連れて肉体のある場所…つまり墓場に戻らなければならない。
多大な苦労を経ての復活宣言。
お墓の前で復活呪文『リラフ』を唱えるとようやく仲間が甦ります。 かなり手間がかかるので、町の近くで死んだのならまだしも、町から遠く離れた場所や敵が強いダンジョンの奥深くで死んでしまうようなことがあったらリセットを考えたほうが良いかもしれませんね。
どこかのRPGみたいに、棺桶を使うわけにはいかないのかしらねえ(´Д`;)
ではストーリーの方を進めましょう。 ゼラーナではサバを仲間にするほかにも、たくさんの重要な情報が聞けますよ。
うーん、どれも気になる話ばかりだわ。メモメモφ(`ω´)
続けて他の町でも情報収集だ。
勇者の証明。
サンクレーテの神殿では長老から重要な話が聞ける。 主人公の右腕にあるアザこそがファレイの勇者だというのは取説内ですでに言われていたことだが、 その者が3つの像を集めて神バーンを復活させるという伝説があるらしいな。
ええと、今までの情報を整理するとこういうことでいいのかしら。
そんなトコですかね。 まだ東の方に町があるらしいので、そちらで情報収集を続けましょうか。
ドラゴンの牙を探している薬屋はこの町にいたのね。 あとで薬を作ってもらうよう頼んでおかなきゃだわ。
それはドラゴンを倒してからでもいいだろう。 先におばばが紹介してくれたバベルの山にいるという術使いに会いに行こう。
術使いの友達のおばば。
術使いの友達のおばばの友達の術使い。
岩をどかしてどかして、やっと件の術使いを見つけました。 おばばの紹介だったら…ということで、術使いの言葉を教えてくれます。 これまで通ってきた町にいた他の術使いともこれで話せるようになりました。 皆さんきっと大事なことを教えてくれるはずですよ。
ここまで来たのにまた戻るのー?(´д`;)
さすが術使い、一気に核心に迫ったわね。 苦労して最初の町まで戻った甲斐があったわあ。
ドラゴンを倒すには黄金の弓と銀の矢が必要なんですね。 覚えていますか?黄金の弓はファレイの道具屋で売っていましたよ。
もちろん、ぜんっぜん覚えてないわよ!
いばるな!(´д`;) 銀の矢はバベルの山にあるという聖なる岩のところで手に入るぞ。 取ったらそのまま洞窟に入るからランタンは忘れずに買っとけ。
サタン一族の先鋒、ドラゴン。
さあ、いよいよドラゴンとの戦いだ! 準備はいいか!?
早っ!Σ(゜д゜;)
まだ、まだよ!そんなにすぐ戦うなんて聞いてないわあ!
実際はそれなりに長いダンジョンなんですけど、特筆するようなことがないので省略させてもらいました(^^;) それでこのドラゴンなんですが、今のように赤い状態は無敵なのでいくら攻撃しても意味がないんですね。
そうなんだ。じゃあ金銀の弓矢がない状態でここに来たら?
戦うことはできるが倒すことはできん。 謎をしっかり解いておかないとボスを倒せないアドベンチャー性もこのゲームの特徴だな。 さあ、銀の矢を射るんだ。
よおし、くらいなさい!(゜□゜)
無敵の力を失って緑色になったわ!
王女のためにキバをもげ。
あ、あれ。 何回か攻撃しただけなのにずいぶんアッサリ倒れたわね。
ドラゴンにとって無敵の力による絶対的な防御力こそが全てだったのでしょう。 それを失ってしまってはどうしようもなかったのでしょうね。
では凱旋だ。 早くドラゴンの牙をリキュームの薬屋に渡さなきゃならないからな。
それで薬ができたら王女様の所に行くのね。
病床の王女。
薬の効果は抜群で、王女の病気もすっかりよくなったようです。 やりましたね(^^)
王女はお礼にコルステの国の言葉を教えてくれる。 王もコルステへ渡る許可をくれたし、新しい土地へ渡る時が来たようだ。
最初の国にしては結構な大冒険だったわね〜。 このあとどのくらい続くのかしら。
それはお楽しみにしておきましょうよ。 少なくとも、まだ3つの像のうち1つを獲得したところだという目安はありますけどね。 まだまだ冒険は続きますよ。
この後も新しい仲間との出会いや不思議な謎がたくさん待っている。 冒頭で言ってた神バーンの正体もな。 ここでこれ以上紹介することは差し控えるが、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
いざ、次の国コルステへ。
『インドラの光』は確かにドラクエのヒットを受けて製作された。 しかしただの真似ではない。非常に熱意と創意に溢れた作品だ。
上では説明してませんでしたが、同じアイテムでも町によって値段が違うんですよ。 なので買い物するときは悩んじゃうんですよね。後の町で安く売ってないかと考えちゃって。 このあたりもリアリティがあって面白いと思いました。
リアリティと言えば酒もあるな。 酒はMPが全回復する便利なアイテムなんだが、時々酔っぱらってHPが減ってしまうんだ。 面白いことに仲間キャラごとに酒の強さが違っていてな。使いどころを考えされられたもんだ。
へえ。 足の早さもそうだけど、そういう形で個性付けするのは面白いわね。
これら個性的な要素が集まってインドラの光らしさが形作られているんです。 ちょっと個性的すぎて後代の作品にあんまり受け継がれていないものばかりですが、だからこそ他のゲームにはない唯一無二の魅力として光ります。
もっとも、受け継がれてないということは評判があまり良くなかったということでもある。 復活方法や仲間の自動追尾などの要素はアイディアとして面白いが、プレイヤーに与えるストレスが大きいわりにメリットはほとんどないしな。
どれだけ斬新でもそれが楽しさにつながらないと受けないものね。 実験的な要素がこれほど多く盛り込まれたのはファミコンRPGの黎明期だからこそなんでしょうね。
1987年1月に発売された『ドラゴンクエストU』は発売前から予約だけで売り切れるなど、前作を上回る大ヒットとなった。 RPGの魅力・面白さはいよいよファミコンユーザーに伝わったがドラクエUは売り切れで買えない人が続出していたし、 他にRPGはほとんどなかったため今度は逆に飢餓感が生まれる事態となってしまった。
そうした状況で迎えた10月はRPGの当たり月でした。 パソコンから移植されたアスキーの『覇邪の封印』、昔話をモチーフに親しみやすい作風にしたハドソンの『桃太郎伝説』、そして『インドラの光』。 新しいRPGを望んでいたユーザーから高い評価を得たのはもちろん、バリエーションの広がりにも大きく貢献しました。
(同じ月に『星をみるひと』も出てたことには触れないのね…。別にいいけど)
パソコンですでに高い評価と知名度を得ていた『覇邪の封印』やその後も続編が作られ続けた『桃太郎伝説』、そして翌年2月に発売された『ドラゴンクエストV』。 それらの著名な作品の陰に隠れてしまったところは否めないが、『インドラの光』も間違いなくファミコンRPGの基盤を強固に支えた一作だった。
ケータイアプリにも移植されているので、もし興味がわいたら遊んでみてほしいです(^^)
初稿:2020年1月4日
最終更新:----年--月--日