『ポパイの英語遊び』に続くファミコン教育ソフトの2本目がこの『ドンキーコングJR.の算数遊び』だ。
ファミコンが登場した1983年に発売された9作のゲームソフトのうち2作を教育ソフトが占めたわけね。 ラインナップを並べてみると、この立ち上げ時期に任天堂がどういう戦略を取っていたか何となく見えてくるわ。
家庭に根差すことが第一だったんですね。 当時はまだサードパーティの概念はなく、任天堂一社による供給でしたのでそうした方針は見えやすいです。
四角の数は桁数を表している。
この算数遊びもゲームモードは3つよ。 まずは一人用の『+−×÷ EXERCISE』から見てみましょう。 このモードでは四則演算の練習ができるわ。最初にどのパターンで計算するかを選んでね。
パターンを選んだら画面が切り替わる。 右上に未完成の数式が見えるだろ?あれを解いていくわけだ。
数字はJrの高さで調節だ。
カラス(ニットピッカー)のいる場所から順に空欄を埋めていきます。 空欄の下にぶら下がっている鎖に飛びつき、Jrを上下すると表示される数字が切り替わるので ちょうどいい高さになったら隣の鎖に飛び移りましょう。
渾身のガッツポーズ。
全部の空欄を数字で埋めたら飛び降りて判定、正しい答えならガッツポーズを決めてクリアよ。 間違いがあれば尻餅を着いてやりなおしになるわ(^^;)
これを10問繰り返して1ゲームになる。 このモードは淡々と問題を解いていくだけだから人を選ぶかもしれないな。
特にゲーム的な邪魔が入ったりすることもないですし、 わざわざビデオゲームでやることもないと考えちゃう人もいるかもしれませんね(^^;)
問題がランダムなのと、しっかり正誤判定をしてくれるあたりはコンピューターならではだけどね。 計算力の地力をつけるためなら悪くはないと思うわよ。
『CALCULATE』は AモードとBモードがあるが、内容はほぼ同じだから合わせて説明しよう。 こちらは対戦型の二人用となっている。本作のメインモードだ。
多人数プレイを評価されているゲームは数ありますが、こうしてメインモードに据えているのは珍しいです。
でもメインと呼ぶにふさわしく、対戦ツールとして出色の出来になっているわ。 こっちの方がゲームらしい仕上がりだから製作者としても自信があったのかもね。
ドンキーコングが掲げる数字を求める計算式を導こう。
ではルールだが、中央にいるドンキーコングが掲げたプラカードの数字と回答欄の数が同じ数になるように、 画面上にある数字と四則演算の記号(+−×÷)を取って合計を合わせていき先に数字を合わせた方が勝利になるというものだ。
最終的に数字が合えば、途中の計算はどんな過程を辿ってもいいのよ。 例えば掲げた数字が『80』だとしたら、『9×9-1』でもいいし『(4+6)×8』でもいいってわけ。
正解への解法を瞬時に思い浮かべる計算力、その中から画面上の配置を見て実現可能なものを取捨選択する判断力が問われます。 相手の状況を読み取りわざと数字を先取することもできるので、対戦はなかなか白熱しますね(^^)
熱中しているうちに本当に計算力が上がっていくのが実感できるからな。 教育とゲームがこれほど噛み合ってる例は当時はおろか後の世まで含めても多くない。
でも四則演算を一から教えてくれるゲームじゃないから、ひととおりの計算が一応できることが前提になってることは注意してね。
そうそうAとBのモードの違いですが、Aでは回答欄の数字が0から始まるのに対しBでは始めから何らかの数字が与えられていたり ドンキーコングが掲げる数字にマイナスのものが混ざるようになります。Bの方が少し難度が高いようですね。
ここからは完全に余談だけど、この教育ソフトシリーズはローンチタイトルの素材を流用して製作されていたの。 グラフィックやステージ構成が使いまわされていることに気づいた人も多いんじゃないかしら。
そこに気づくとまた疑問が生まれるな。 ローンチは3作あったのに教育ソフトは2作しか世に出ていないのだから。
『ドンキーコング』に対応するソフトが出ていないんですよね。 しかし発売には至らなかったもののちゃんと製作は進められていました。
その名も『ドンキーコングの音楽遊び』! 昔の雑誌やチラシに発売予定が載ってたから存在そのものは知ってる人も多いかもね。
ピアノの鍵盤で音を探すクイズモードやカラオケモードが用意されていたようだ。 開発中止となった理由は定かじゃないが、幾らか推測はできるな。
ファミコンの少ない容量で長い楽曲を収録するのは難しかったと思います。 通常のゲームのBGMは短いループでしたが、歌える曲を入れるならそうはいかないですからね。 入れても数曲が限界だったでしょう。
それにカラオケもね、ファミコンは2コンにマイクが付いてるけど、判定できるのは音が入ったかどうかのON・OFFだけで音の強弱なんかはわからないから 採点ができないのよね。ただ音楽を流して歌わせるだけのつもりだったのかしら?(^^;)
収録曲の版権が問題になったんじゃないかとの噂もある。 いずれにしてもゲームとして成立するほどの完成度まで磨き上げることができなかったのは確かだろう。
任天堂が音楽ゲームで成功するのはだいぶ後のことになるけど、この頃から音楽を使った遊びを考えていたってのは面白い話ね。
初稿:2019年8月18日
最終更新:----年--月--日